亜美の大変さに気づいた夫

それから、亜美と脩人は2人がかりでリビングの掃除をした。脩人は亜美の指示に素直に従い、テキパキと動いてくれた。その甲斐もあってかなり早くリビングを元通りキレイにすることができた。

そして亜美は冷蔵庫にあった材料を使って4人分のホイコーローを作り、ダイニングテーブルに並べた。

その手際のよさに、目の前で見ていた脩人は口をあんぐりと開けていた。

「なに?」

「いや、亜美って本当にすごいことをしてたんだなって思ってさ」

「なによそれ? 別にこんなのずっとやってたことじゃない」

「だからすごいって言ってるんだよ。俺はたった1日やっただけでもう体力的にいっぱいいっぱいだよ。こんなことを毎日、しかも何年もやり続けてるってのがすごいよ……」

素直に脩人に褒められて亜美は嬉しい気持ちになる。

「どう? 少しは私の大変さが分かった?」

「ああ、身に染みた。俺はこんな大変なことをやってもらって当たり前だって思ってたし、押しつけてしまってたんだ。だからこれからはしっかりと亜美の分の休みも作ろうと思う」

脩人に言われて、亜美は頷いた。

「分かってくれて良かった。あなたが忙しいのも分かるけど私だって大変なのよ。だからこそこれからは力を合わせていこうよ」

「……ああ。本当に今までごめんな」

「もちろん今の状態じゃ家事も任せられないよ。だから少しずつでもいいから覚えていってほしい。今日だって休みをもらえて嬉しかったけど、正直ずっと家のことが心配で心から楽しむことはできなかったからね」

「……だよな。実際こんなことになってるし」

亜美はそこで脩人に笑いかける。

「いきなり全部ができるようになってほしいなんて言わないわ。ちょっとずつ覚えていってもらえたら私としては大助かりよ」

「……ああ。頑張るよ。今まで亜美に迷惑をかけた分取り返すからさ」

脩人は力強い視線を亜美に向けてくる。これからは、少しくらい期待してもいいかなと、亜美は思った。