6月に、約半年ぶりに日経平均株価が4万円を回復しました。4月には株価が急落し、一時は3万円を割り込むとの見通しもありました。株価の急落は投資家に驚きをもたらしますが、わずか数カ月で大きく株価が変動することは市場ではままあることです。今回は世界的な株価の動きを見ていきましょう。
金融市場は、経済政策の良し悪しを見極める「炭鉱のカナリア」
最近、世界的に株価が大きく上がっています。多くの国で6月から7月にかけて主要な株価指数は史上最高値をつけました。
今年の春先まで好調だった株式相場が急変したきっかけは4月2日の米国トランプ大統領による相互関税の発表でした。この通称「トランプ関税」は世界に大きなショックを与えました。原因は米国と利害の対立する中国やロシアに対してだけでなく、日本やEU(欧州連合)など同盟国に対しても極端に高い関税を課したからでした。
トランプ関税で世界の株価が急落した原因は、関税引き上げによって米国でインフレが再燃し、消費が落ち込んで景気後退が避けられなくなるという懸念が高まったからでした。懸念は株安だけにとどまりません。全面的な米国売りとなり、「株安」「ドル安」「債券安(金利高)」とトリプル安となったのです。
しかし、後から振り返れば、4月中旬までのトリプル安が危機のクライマックスでした。ベッセント米財務長官が急きょフロリダに飛んでトランプ大統領と面談し、大幅な関税政策の修正を実現しました。どう修正されるかは、実はまだ定かではありません。とはいえ、政策修正のスタンスは高く評価され、株式相場が戻るきっかけとなりました。
金融市場は「炭鉱のカナリア」に例えられます。嗅覚の良いカナリアは炭鉱のガス漏れを検知するとされています。これと同じで、経済政策の良し悪しを金融市場が評価して警告を出すのです。トランプ関税政策の大幅な修正は、この警告を聞き入れたものでした。
実は米国以上に株価が時期的に早く、レベル的にも高く上がった国が多くありました。ドイツ、イタリア、スペイン、UAE(アラブ首長国連邦)、ハンガリーなどです。これらの国は、米国が国際政治から距離を置く孤立主義の姿勢を強めたのに対応して、早い段階で国内政策を強化しました。株価はこうした動きも反映したものです。
ただ日本は、世界情勢の変化への対応が遅く、株価は上がったとはいえ、まだ相対的な出遅れ感が残っています。日本政府も情勢変化に果敢に対応することを期待したいですね。
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