超長期と呼ばれる金利が大きく上がっています。しかし、超長期金利という言葉自体、あまり耳慣れない言葉かもしれません。場合によっては住宅ローン金利に関係することがありますが、預金金利にはあまり影響がないため、気に掛ける人は多くないかもしれませんね。今回は、長期金利の上昇の背景について、解説します。
長期金利・超長期金利の上昇の背景にある、政権運営の動向
長期金利と言えば通例は10年国債の金利です。他方、最近金利が大きく上昇したのは超長期国債と呼ばれる償還までの期間が20年以上などもっと長い国債の金利です。3月末と直近を比較すると、政策金利は0.5%で変化なし、10年国債の金利は約1.5%で大きな変化はなし、20年国債の金利は約2.2%から2.5%へと約0.3%上昇しました。30年国債や40年国債の金利はもっと大きく上昇しています。もし超長期の金利がもう一段上昇すれば、10年国債の金利も引っ張られて上昇する可能性があり、注意が必要な情勢です。
10年国債の金利が上昇すると、固定型住宅ローン金利や企業向け貸出金利が連動して上がりやすくなります。一方、預金金利は、例えば定期預金でも1年や2年などもっと期間が短いため、日銀が決定する政策金利の動向を反映します。日銀はトランプ関税の影響で景気が下振れするリスクがあることから追加の利上げには慎重な姿勢を示しています。
問題は、超長期金利が上昇した背景です。昨年10月の衆議院選挙で自公政権は過半数を割って少数与党となりました。政権運営のためには野党の要求を飲まざるを得ないのです。今年度予算では国民民主党の要求を飲んで「年収の壁」を引き上げる所得税減税、維新の要求を飲んで「高校授業料の軽減」などを実施しました。そして7月には参議院議員選挙があります。選挙を前に野党が消費税の減税や廃止などを要求しています。自公政権が政権運営のためにこうした野党の要求を飲むと財政がどんどん悪化するのではないかという懸念が超長期金利上昇の背景にあります。
思い起こせば昨年の7月ごろに政府は国民一人当たり原則的に4万円の定額減税を実施しました。お金の流れに色はありませんが、原資はほぼ赤字国債です。あれから約1年が経ち、「ぜひもう一度巨額の減税を」というムードになっていると思われます。超長期金利の上昇は「財政によるバラマキは打ち出の小槌ではない」と警告を発しているとも見られています。
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