現在、統計的に物価が上昇しています。「以前より、20%くらい上がっている気がする」という感触は、正しいと言えるでしょう。日常的に購入する生鮮食料品や穀物は、特に大きく値上がりしています。今後、値上がりが沈静化しても、元の値段には戻りにくいと予測されており、物価上昇に対する懸念が広がっています。

 

高騰が続く生鮮食料品、家計だけでなく、農業・漁業、そして外食産業にも打撃

今年に入り再び物価が上がっています。特に大きく値上がりしているのが生鮮食料品です。このカテゴリーに入る魚介類、野菜、果物などの価格は1月に前年比22%もの大幅な上昇となりました。コロナ禍前の2019年と比較すると昨年末までに27%も上昇した上でのさらなる上昇です。

生鮮食料品の大幅な値上がりの原因は主に天候要因による不作です。野菜と果物は収穫量の減少で需給バランスが崩れ価格が大幅に上昇しました。天候要因は本来なら一過性の要因で、価格に対しプラスにもマイナスにも作用します。その意味では不作の後には豊作になるのが過去のパターンでした。しかし、近年は地球温暖化が原因でこのパターンが崩れつつあります。不作の後に平年並みにしかならず、価格高騰が鎮静化はしても、豊作で大きく値下がりとはなりにくくなったのです。この傾向は10年ごろから顕著となりました。

地球温暖化の影響は魚介類でも顕著です。北海道ではサケが不漁となる一方、かつては取れなかったブリやフグが捕れています。この影響で北海道ではサケの価格が高騰する一方でブリやフグが安値で売られています。ブリは食べる習慣があまりなく、フグは調理師免許を持つ板前が少ないからです。

さらに漁業者の減少や高齢化も影響しています。かつてであれば、サケの価格が上がれば、高値で売却するチャンスを求めて漁に出る漁業者が増加しました。これが経済学の父アダム・スミスが説いた「見えざる手」、自然な市場メカニズムです。しかし、近年はそうならなくなっています。

レストランなど外食産業は生鮮食料品価格上昇の悪影響を受けています。飲食業は近年の度重なる値上げでは明暗が分かれました。値上げしても消費者からすればお得感が増す企業は増収増益で株価も堅調となりました。しかし、今年に入ってのまたの食材価格の上昇で、さらなる対応を迫られています。外食産業全体で、ピンチの後にチャンスあり、となることを期待したいですね。

 

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