米国トランプ政権は、新政権発足直後とは思えないほど次々と政策を発動しています。経済面で特に重要な政策は、移民送還、関税引き上げ、原油価格沈静化、減税など財政政策の四つです。多くの政策が一気に動き出し、複雑で分かりにくい時こそ、政策の全体像を俯瞰(ふかん)してみることが大切です。

 

政権発足直後からダイナミックに動く政策、庶民生活の改善につながるのか

1月20日の就任演説でトランプ大統領は「米国の黄金時代が今始まる」「アメリカンドリームが間もなく復活する」と発言しました。就任演説の大部分は米国に関することで「米国第一」を前面に押し出した内容でした。米国大統領は米国のリーダーであると同時に世界のリーダーでもあります。その意味で世界に対し自由と民主主義による繁栄という理想の姿を示すのが通例です。バイデン前大統領は、トランプ第1次政権で進んだ孤立から脱却して国際協調路線に回帰する方向性を示しました。トランプ大統領の演説はやや異例でした。

トランプ第2次政権は発足直後から政策がダイナミックに動いています。移民送還では犯罪者に対象を絞って軍専用機での送還を開始しました。関税ではカナダ、メキシコ、中国に対し引き上げる大統領令を発出しました。日本も対米貿易黒字が大きく他人事ではありません。中東ではガザでの戦闘の停戦と難民の移住先の仲介を始めました。中東の政治情勢は原油価格に直結します。トランプ大統領は原油価格を大きく引き下げることで米国の物価の沈静化を図りたい意向を示しています。現時点では減税など財政政策には大きな進展はありませんが6月ごろには着手する見込みです。

これだけ多くの政策が短期間に展開すると、経済への影響がどうなるのか複雑な連立方程式のようになります。例えば物価は、原油価格低下は押し下げ要因、関税引き上げや移民送還は押し上げ要因です。さらに今後の減税強化は押し上げ要因となります。政策が物価に対し複雑な経路で影響を与えるため予測が非常に難しくなります。

トランプ大統領はビジネスマンの感覚を持っているとみられています。移民送還、関税引き上げ、物価沈静化、景気拡大のバランスを取りながら大統領主導で政策を進めるとみられます。中でも経済面で優先するのは支持者である庶民生活の改善です。角を矯めて牛を殺すことがないよう、特に物価の沈静化と景気拡大を優先するとみられます。

 

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