高市政権の補正予算がほぼ決定しました。総額18兆円超と、規模が非常に大きく膨らみましたが、物価高対応が中心です。すべての国民に恩恵が及ぶ見込みである一方で、金融市場では少し不安も持たれています。今回は、景気対策への懸念を紐解いていきましょう。

 

積極財政による超大型補正予算は、支援かバラマキか。高市カラーを出すには時間不足の感あり

高市政権が発足して約1カ月半が経過しました。外交面では日米首脳会談の成功など成果を上げた高市政権ですが、内政面では補正予算が最初の大仕事となりました。高市総理が積極財政にこだわったことで、総額18兆円を超える非常に規模の大きなものとなりました。このうち約12兆円は国債の新規発行で賄われます。この効果で来年の日本の国内総生産(GDP)は0.5-0.8%押し上げられるとみられます。

国民への恩恵は、一人当たり2万円の子ども手当、来年1月から3月まで家計当たり約6千円の電気代やガス代の補助、自治体の意向次第では買い物補助となるプレミアム商品券やお米券なども想定されています。

また、補正予算とは別に、ガソリンは今年の12月に1リットル当たり約25円、軽油は来年4月同約17円の暫定税率が廃止されます。消費者にとっての両方のメリットとして激変緩和措置の導入により11月ごろから既に値下がりし始めています。

景気対策の効果で国民が恩恵を受け、景気が良くなるのなら、手放しで喜ばれそうなものです。しかし、金融市場では二つの懸念が示されています。第一は、景気は既に回復局面に入っているので、これほど大きな景気対策は必要なかったのではないかという懸念です。第二に石破前総理が退陣表明した後を見据えて日経平均株価が一気に約5千円も急騰した背景にあった期待とのギャップです。高市総理が主張する危機管理投資や成長投資に力点が置かれるという期待もあったのですが、野党の主張を取り込んだからか、バラマキ色が強くなりました。

その結果、まず10年国債金利など長期金利が約1.6%から約1.9%へと上昇しました。金利が上がると円高になりやすいのですが、正反対に円安が進行しました。少数与党のままではバラマキが恒常化して物価高対応が結果的に物価高を招くリスクが意識されたためです。

今回は官民連携の「強い経済」の実現に向けて高市カラーを出すにはあまりに時間が少なかったと思います。市場の注目は来年1月から国会審議が始まる来年度予算に移り始めています。

 

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