トランプ関税で、株価が乱高下しています。米国が課した大幅な関税引き上げが、世界的な景気後退の引き金になると懸念されているからです。トランプ政権は、関税の大幅引き上げが正しい政策だと信じていますが、それならばなぜ株価は乱高下してるのでしょうか。今回は、トランプ関税による影響と今後を解説します。

 

国際経済の仕組みを破壊する「トランプ関税」、米国と各国の交渉はどうなる?

4月2日にトランプ大統領が発表した関税の大幅な引き上げは世界に大きなショックを与えました。関税率は、日本が24%、英国が10%、ベトナムが46%、ブラジルが10%など国によって違います。高関税をかけられたベトナムは、これでは経済が立ち行かなくなるとして株価と通貨が急落しました。ベトナムに現地工場を持つ米国の衣服や靴の製造販売会社の株価も急落しました。

関税には戦前の教訓があります。貿易することを前提にしているにもかかわらず、高い関税で計画が狂うと、便益が大きく低下するのです。輸出を見込んで多くのモノを作る国では、計画通りに輸出が出来なくなり、モノが余ってデフレになります。逆にモノを輸入する予定だった国では、不足してインフレになります。双方とも困るのです。1930年代の大恐慌はこうして深刻化して戦争の原因にもなりました。この教訓から戦後は自由貿易と国際分業のルールに基づく国際経済の仕組みが整備されて来ました。その仕組みが破壊されつつあるのです。

元々トランプ政権の関税引き上げは、米国企業が収益性を高めるための交渉の一環と見られていました。しかし、関税引き上げ発表の前後から、トランプ政権高官がこの見方を否定し始めました。関税引き上げが自己目的化したため交渉には応じないという姿勢を強めたのです。ならば高関税の導入で世界経済が断絶的に悪化して景気後退に至るのは避けられない、という見立てから株価が急落しました。

その後にトランプ大統領は、交渉に応じるため関税引き上げの実施まで猶予期間を設けました。日本は優先的に米国と交渉を始めました。米国は日本のコメの高関税や外国車販売の難しさ、さらには不十分な防衛費負担などの問題点を指摘されており、対応を迫られることになりそうです。

株価急落は関税引き上げが誤った政策であると強く警告を発しているのです。今後の焦点は、交渉によって関税率がどこまで低下するかです。当面の間、事態は流動的でまだ紆余(うよ)曲折があると思います。

 

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