サーブ、レオナルド、タレス…と聞いて、何のことか分るでしょうか? 実はこれらは、最近株価が高騰している欧州の防衛関連企業の名前です。中東や東欧でミサイルやドローンが飛び交う戦闘が起きているというニュースが流れていますが、それと関連があります。悲しいニュースではありますが、世の中の受け止め方が変わり始めていることを表してもいるのです。

 

「死の商人」への投資ではなく、「祖国を守る」「争いを防ぐ」投資に

最近の世界的な傾向として防衛関連企業の株価が大きく上がっています。冒頭で挙げた3社以外でもドイツの戦車メーカーとして有名な「ラインメタル」、英国の戦闘機メーカーとして有名な「BAEシステムズ」の株価も高騰しています。この傾向は日本の「防衛関連株御三家」である「三菱重工」「川崎重工」「IHI」にも当てはまります。

世界的に防衛関連企業の株価が高騰した背景は主に二つあります。一つは米国が同盟国に防衛費負担の大幅な増加を強く求めたことです。米国トランプ政権は、米国の防衛費負担が突出して重い一方、欧州やアジアの同盟国は軽すぎるとして是正を求めてきました。その結果、欧州やアジアの同盟国は防衛費を大幅に増加させる方向性となりました。これにより防衛関連企業は売上と利益が大幅に増加する見通しが高まり、株価を押し上げる要因となりました。

もう一つは、ウクライナや中東などで実際に戦闘が顕著に増加し、テレビなどの映像でお茶の間に流れたことです。これを受けて各国とも国民が万が一への備えに理解を示し始めました。万が一は、必ずしも戦争の準備というわけではありません。真逆の戦争をしないための抑止力の側面もあるのです。

かつて武器弾薬の製造や販売は「死の商人」と呼ばれました。商売繁盛が戦争や戦闘による死者の増加を意味するからです。しかし、最近はニュアンスが変わっています。防衛力を強化することが戦闘や戦争を事前に防止する抑止力になるという考え方からです。これと軌を一にして機関投資家の考え方も変わり始めています。かつては死の商人の側面を持つ企業への投資は、社会貢献ではないという考え方から手控えられる傾向がありました。しかし昨今は抑止力も含め「祖国防衛のための防衛装備品を製造する企業への投資なら問題はない」というように認識が変わっています。

昨今の防衛関連企業の株価動向には国際関係をめぐる情勢変化が如実に表れているのです。

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