老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを開催しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いたニックネームまっちゃんさんの体験談をお届けします。

iDeCoが背中を押し、「小さな投資家」へ変身

年収200万円台、工場アルバイト、貯金300万円だった私にとって、老後の備えとは、老後そのものより遠い存在でした。5年前、人生の折り返しを迎えてあらためてそのことを考えたとき、大きな不安、というよりは恐怖心を覚えました。

そんな折に出会ったのがiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)でした。投資などはお金持ちの人がやるものだと思っていましたが、調べていくと、iDeCoは私のような社会の片隅で暮らす人間にも分けへだてなく門扉を開いてくれていました。

私は急かされるように証券会社に口座を開設し、一生懸命、頭をひねってポートフォリオを作りました。

あれから5年がたちました。相変わらず私は年収200万円台の工場アルバイトで、爪に火を点すような生活をしています。しかし、資産は1000万円を超えました。

iDeCoだけではありません。iDeCoが投資の世界へ背中を押してくれたおかげで、私は投資に興味を持ち、NISA(少額投資非課税制度、ニーサ)なども利用して小さな投資家へ変身することができました。

安心感を得るには遠い道のりですが、今は楽しみながらせっせと積立投資を重ねていくのが心の張り合いになっています。

投資は、ただのマネーゲームではありません。いろいろなことを考えさせてくれ、生活環境の改善や、自分を磨く機会を与えてくれます。iDeCoで増えたのはお金だけではなく、眼前の世界と未来への可能性でした。

人生を折り返したとはいえ、老後まではまだ多くの時間が与えられています。その貴重な時間と、なけなしの余剰金を握りしめて、次は資産2000万円を目指すべく、私は社会の片隅で目を輝かせています。