第一印象を覆したFPとの出会い

福利厚生の一環として無料のFP相談があることは知っていましたが、手続きが面倒だったこともあり、これまで一度も利用を考えたことはありませんでした。しかし、NISAか繰り上げ返済かの判断について、我が家の事情も加味した上で第三者から客観的な助言をもらう必要性を痛感しました。

そして、出会ったのが平野さんでした。FPという職業から金融機関出身の堅実そうなビジネスマンを想像していましたが、初対面の平野さんに対して私が抱いた印象は「ベンチャー企業の社長」でした。年の頃は40代前半くらいで、髪は茶髪、カジュアルスーツにノーネクタイ、靴もスリッポンです。

私の内面の驚きを見て取ったのか、平野さんが開口一番、「田部井さん、今、僕のこと“らしくない”って思ったでしょ?」と突っ込みを入れてきました。「いや、そんなこと……」としどろもどろになった私に、平野さんは「外見通りの砕けた人間ですから、本音で聞きたいことをどんどん聞いてくださいね」とニカっと笑いかけ、以降は世間話をするような和やかな雰囲気で面談が進みました。

想定外の評価が導いた気づき

これまでの人生を振り返ると、私は特別成績が優秀なわけでも、仕事ができるわけでもなく、あまり褒められた経験がありません。しかし、この面談で平野さんは我が家の現在の家計、資産の状況などを確認し、「田部井さん、いいですねぇ! 僕から見れば150点、いや、200点ですよ!」と賞賛してくれたのです。

とりわけ義両親との関係性については、「ひと昔前ならともかく、田部井さんの世代でこれだけ親孝行している人を見たことがない。私の妻は税理士ですが、お客様の相談の9割以上は親の財産を1円でも多くもらうにはどうすればいいかですよ」と持ち上げられ、自分の人生が肯定されたように思え、うれしくなりました。

その上で、平野さんは次のような助言をくれました。「だから田部井さん、今回のテーマについても、ご自分の判断を信じてはいかがですか?」

つまりは、妻が考えるように繰り上げ返済で住宅ローンの負担を減らしておくことを勧めてくれたのです。平野さんが挙げた根拠は次のようなものでした。

私の同期が言う「お金に働いてもらうことが将来の生活基盤の安定につながる」、それは一理ある。一方で、NISAが圧倒的優位というシミュレーションはあくまでシミュレーションであり、現実にそうなるとは限らない。自分も金融機関に就職した20数年前からずっとマーケットを見てきたけれど、むしろ、想定外の動きをするのがマーケットだと思っている。

変動金利型の住宅ローンの金利動向もまた不透明だと言える。トランプ2.0でこの先日本の景気が悪くなり、それほど金利が上がらない可能性も否定できない。そうした中で確実なのは、繰り上げ返済をしておけば、借入残高やそれに伴い将来払う利息が減らせることだ。