<前編のあらすじ>
食品卸売会社の人事部で働く小暮敦子さん(仮名・48歳)は、氷河期世代の一人です。新卒時に50社以上応募しても内定が得られず、派遣社員からキャリアをスタートさせました。
10年前、派遣先から契約社員への転換を打診された際は涙が出るほど喜び、その後も真摯に業務に取り組んできました。しかし、2025年春、新入社員の初任給が自身の給与と同水準だと知り、複雑な思いを抱えることになります。
●前編:【「新入社員の初任給が自分と変わらない」10年勤務でも報酬上がらず…48歳契約社員が語る氷河期世代の厳しい現実】
10年勤続でも新入社員と同水準の給与
氷河期世代の私は就活に失敗した後、派遣会社に登録し、事務系の派遣社員として職場を転々としてきました。10年ほど前、当時の派遣先だった現在の勤務先から「小暮さんには長く働いてほしいので、業務委託契約に切り替えてもらえないか」と声をかけていただき、以降は契約社員として働いています。
勤務先は従業員が200人ほどの中規模の食品系の卸売会社です。バックオフィスも専門性が求められることから、営業部門以外は異動が少なく、私が勤務する人事部の顔ぶれもほとんど変わっていません。皆いい人ばかりなので、この先もずっとこの職場で働いていけたらと思っていました。
唯一不満があるとすれば、報酬がこの10年間で10万円(年間)ほどしかアップしていないことでした。賃上げラッシュで社員の基本給も大きく上がった去年、今年は昇給のチャンスだったのですが、人事部長から「会社として業務委託契約の人への賃上げをどうするかが固まっていないんだよね。悪いけど、今年は現状維持でお願いできないかな」と言われてしまいました。
一方で、この4月から入社してきた3人の新入社員の初任給は27万円です。初年度は住民税の引き落としがないので、手取りは私とほとんど変わりません。海のものとも山のものとも分からない新入社員と、10年選手の私の収入に差がないというのは解せない思いがありました。
そんなもやもやした気持ちを抱えながら臨んだ新人研修でトラブルが起きたのです。