<前編のあらすじ>

美希の夫・友樹は大の甘党である。コンビニスイーツの新作はかかさずチェックし、飲み物もオレンジジュースなど甘味の強いものを好んで飲んでいる。アイスももちろん大好きだ。

そんな友樹の様子がおかしい。

冷凍庫を見てみると、かかさず食べていたはずのアイスは封が空いていないまま4日も放置されているし、暖かいお茶を好んで飲むように。

原因は奥歯にできた大きな虫歯だった。そのうちモノがまともに食べられなくなると美希は友樹に歯医者通いを進めるのだが、友樹は一顧だにせず……。

前編:「暖かいお茶が良い」大の甘党夫が激変させた、奥歯にできた“クレーターのような穴”

金輪際食べられなくなるよ

「なあ、美希、俺のお菓子がないんだけど……」

ある日、美希がリビングでくつろいでると、友樹が戸惑いながら声をかけてきた。

「もちろん、処分したよ。クッキーも、チョコも、プリンも、コーラも、イチゴオレも全部。だって虫歯の人がお菓子なんて食べられないでしょ?」

「な、なんでそんなこと……」

オモチャを捨てられた子供のように落ち込む友樹だったが、すでに同情の余地はなかった。

美希はあれからも何度も歯医者に行くように言ってきた。しかし自然治癒するだの、牛乳を飲めば大丈夫だの、訳の分からない持論を並べるばかりで、友樹の態度は変わらなかった。そこで美希は、とうとう最終手段に打って出たのだ。

「楽しみを奪ってるのは自分自身でしょ! ここで歯医者に行かなかったら本当に甘いものなんて金輪際食べられなくなるよ! 現にジュースとアイスがダメになってるんだから! それでもいいの⁉」

「いやでもさ…」

「でもでも言ってても虫歯は治らない! 医者に行くか、お菓子を諦めるかのどっちか!」

美希に詰められて、友樹は肩を落とす。

「……お菓子もジュースも諦めたくないって」

「だったら歯医者に行って」

美希は近所の歯医者のホームページを開いたスマホを差し出した。友樹は観念したようにうなずいて、歯医者に予約の電話をかけた。