あらまぁ……
「お義母さん、こんにちは。今日はありがとうございます」
作った料理をテーブルに並べながら、挨拶をする。かすかな笑みを浮かべた義母の顔には、ちゃんと縁起物が並んでるじゃない、と書いてあるような気がする。
「日和、ついさっき寝ちゃって。しばらくは起きないと思うので、よかったら先にお昼にしちゃいませんか」
「そうね。手洗ってくるわ」
義母は荷物を下ろし、洗面所へ向かっていく。しかし戻ってきても席にはつかず、和室に飾り付けられたひな人形のもとへ歩いていった。
「あらまあ……立派なひな飾りじゃない」
目を丸くしている義母の反応に、恵はしてやったりと、心のなかでほくそ笑む。
「お義母さんの仰ることももっともだなと思って、奮発したんです。今はまだ日和もひな人形なんて分かりませんけど、一生ものですし、きちんとしたものを買おうと思って」
「そうよ、やっぱりこういうのはそうじゃないとね」
「でもびっくりしたよな。50万もするんだもん。まあ、職人がひとつひとつ手作業で顔を描いたりしてるらしいし、当然っちゃ当然なのかもしれないけど」
「ごっ、50万……っ⁉」
隆一の何気ない言葉に声を裏返したのは義母。彼女はたった今耳にした金額を確認するように、恵にきつい視線を向けた。
「ええ、50万です。並んでたなかで1番いいやつ買ったんですよ」
「いい、恵さん。こういうのはね、値段じゃないの」
義母はため息を吐いた。