米国動静で注目の「3-3-3」政策とは

そのほかの今後の見どころは、米国の長期金利です。今は4.5%から4.6%ほどで落ち着いています。これが、今後4%に向けて下がる、あるいは5%に向けて上がっていくのかがポイントです。株にしても為替にしても大きく影響を与えるでしょう。

出所:内田氏

ここで改めて、トランプ政権が進める財政政策と国債利回り(長期金利)の関係について整理したいと思います。

政府が大盤振る舞いでお金を使う話が前面に出る場合は国債をどんどん発行し、お金を調達しないとなりません。そうなると需要超える形で国債の発行量が増えるので、債券価格は下落します。一方で債券価格と金利は逆の関係にありますから、債券価格の下落は金利上昇圧力となります。またこれと真逆の動きをすると金利低下圧力となります。

では、トランプ政権の政策はどういった影響を与えるのでしょうか。財政と長期金利の関係で注目のトランプ政権の政策の一つがトランプ減税です。年末で期限を迎えてしまいます。

トランプ減税を恒久化するために法人税の引き下げも含めた減税を進める、つまりは財政拡張を進めるとなれば、金利上昇圧力がかかる場面が今後どんどんと出てくるでしょう。

トランプ政権の政策については、今は関税の話が中心となっていますが、来週以降は減税周りの話にもアンテナを張っておく必要があると思います。

出所:内田氏

ただ、私自身、先が見えていない点が一つあります。現・米税務長官で、ヘッジファンドなどで投資家をしていた経験のあるベッセント氏の発言周りの動静です。

ベッセント氏はトランプ大統領から指名された当時、「3-3-3(三つの3)」という政策を打ち出しました。安倍元総理の「3本の矢」に倣ったのだそうです。内容は次の三つです。

・2028年までに財政赤字をGDP比3%に削減
・日量300万バレル相当の原油増産
・規制緩和によるGDP比成長率3%の実現

2つ目と3つ目については「規制緩和」と原油増産によりインフレを抑制することを考えているトランプ大統領と足並みがそろっています。

一方、1つ目の財政赤字削減は緊縮財政的です。つまり、米国全体としては、財政の無駄遣いを見直そうという動きも出ていると考えられます。これは、どんどんとお金を使い減税する方向に進めようとしていると見られる今のトランプ政権とは逆向きです。

米国は財政に関してどういった方向性で話を進めていくのか、そもそもトランプ大統領とベッセント財務長官はどこまで意思疎通ができているのか、議会とどんな方向で話を進めるのか。

来週いきなり何か具体的な話が出ることはないでしょう。ですが、これらの動静が今後の長期金利、ひいては株・為替マーケット全体を見ていくうえでは非常に重要になるのではないかと思っています。

 

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