どの程度のリターンを獲得できれば、資産運用は「成功」したと言えるのか?
一般的に、長期で見たときの世界株式の期待リターンは年率7%程度といわれている。重要なのは、この数字には一定のインフレ率も考慮されているということだ。足元数年は、米国株を中心に年率で二桁台のリターンを獲得できていたので、例えば、「年3~4%程度」と聞くと誤差の範囲と思ってしまうかもしれない。しかし、この「年3~4%程度」こそが、期待インフレ率に相当するリターンであり、最低限、獲得しておきたい水準となる。
言い換えれば、年3~4%程度のインフレに負けない程度のリターンを確保できれば、資産運用としては十分合格点=成功ということだ。NISAやiDeCoは長期投資が原則なので、世界株式と同じ7%程度を目標リターンとするのが理想だが、もう少しリスクを抑えて、5%程度でも十分といえる。
ここで1つ注意したいのは、最大瞬間風速的に何十パーセントものリターンを獲得しているような商品である。市場平均を大幅に上回るリターンを記録する商品は、リターンの源泉が特定の銘柄や業種に偏っている傾向にある。そのため、潮目が変わると、一気に成績が悪化し、その後なかなか回復できないという事態に陥ることがある。投資信託をはじめ、金融商品の価格は、一度急落すると、再び同じ水準まで戻すために下落率以上のエネルギーと時間を要する。たとえば、基準価額1万円の投資信託が25%下落すると7500円になるが、ここから再び25%上昇しても、1万円には届かない。7500円の投資信託の基準価額が1万円まで回復するには、33%以上のリターンが必要となる。
このように、リターンには非対称性がある。したがって、長期資産形成においては、瞬間風速的に高いリターンを獲得して、その後長く低迷が続くよりも、インフレに対処できる程度のリターンを着実に獲得し続けることの方が重要と言える。