石破ショック
9月27日に自民党総裁に石破氏が確定したのはサプライズだったと見て良いだろう。確定した途端に海外で市場が開いていた日経平均先物は急落が始まり、約2,400円もの大幅安で引けた。円相場も約3円もの大幅な円高となった。
市場の懸念の背景は石破総裁の過去の発言である。金融引き締めと法人増税や金融所得課税増税に前向きな意向を示していたことが材料視された。
ただ、自民党内で長く党内野党だった石破総裁は、主流派だったアベノミクスと反対のことを言わざるを得なかった。主流派と違う事を言えば、自ずと反アベノミクス=反成長促進的な内容になる。
今後、石破総裁は野党が与党となった時に政策を修正するのと同じ試練を超えなければならないだろう。その意味において、石破政権の政策は、これから現実路線に修正する可能性が高い。その布石は既に打っている。財務大臣には「私にはその(アベノミクス)精神がしみ込んでいる」という加藤勝信氏が内定したと報道されている。
岸田ショックと新しい資本主義
2021年9月29日に岸田氏が自民党総裁に決定した時にも市場はネガティブに反応した。岸田氏が前向きな意向を示した金融所得課税などが材料視された。29,544円だった日経平均株価は5営業日連続で27,528円まで約2,000円も急落した。しかし、その後に岸田政権は政策を大幅に修正した。たとえば、金融所得課税は、正反対の新NISAなどの投資優遇税制となった。
この投資優遇税制は新しい資本主義の端緒だった。国民には税制優遇を設けて貯蓄より証券投資を奨励、投資される企業には最低基準としてPBR(株価純資産倍率)1などガバナンス改革を徹底させた。その過程で企業には人件費の削減や下請け叩きで安易な利益を出さないよう、真逆の賃上げ要請、下請け叩き防止を徹底した。結果的に新しい資本主義は正しい方向で機能し始めたと評価できる。
石破総裁は「さらに新しい資本主義を加速」と岸田政権の経済政策を踏襲する意向を示している。これも政策修正の布石と見て良いだろう。
長期安定政権は親米政権
石破総裁はアジア版NATOの創設や日米地位協定の改正に意欲を見せる。しかし、これらも党内野党だったことが発端となったアイデアである可能性が高い。実現の可能性はほぼゼロとみなして良いだろう。そんなことよりも、沖縄の基地移転の進捗や普天間基地の跡地再開発などやるべき問題が既に目の前にある。
伝統的に日本の戦後政治では、親中政権は短命で株価は下落、親米政権は長期安定政権で株価は大相場を作る傾向がある。後者の例は中曽根政権、小泉政権、短命だったが岸田政権だ。
石破総裁がこれまでの発言を修正して現実路線に転換することを期待したい。(脱稿9月30日)
■関連リンク:
りそなアセットマネジメント マーケットレポート内「黒瀬レポート」https://www.resona-am.co.jp/market/report/#tabSwitchC03
〈当記事に関するご留意事項〉
·当記事は、投資環境や投資に関する一般的事項についてお伝えすることを目的にりそなアセットマネジメント株式会社が作成したものです。
·当記事は、投資勧誘に使用することを想定して作成したものではありません。
·当記事は、当社が信頼できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
·運用実績および市場環境の分析等の記載内容は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果および市場環境等を示唆・保証するものではありません。
·りそなアセットマネジメント株式会社が設定・運用するファンドにおける投資判断がこれらの見解にもとづくものとは限りません。
·当記事に指数・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権、その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
·当記事の記載内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。