世界的な株価の変調
世界的に7月下旬から株価が変調をきたしています。主な原因は3つあります。
1つは中東情勢です。7月31日にイスラエルはイランでハマスの最高幹部を殺害したとみられ、これを受けてイランは報復を宣言、緊張感が高まっています。米国の野党共和党は、第三次世界大戦の始まりだとして与党民主党を批判しています。この感覚は日本人とは大きなギャップがあります。
次に米国景気の失速懸念です。8月上旬に米国で発表された景気指標が悪かったことから、景気が崖から落ちるように急激に悪くなる懸念が一気に高まりました。一部には緊急的な利下げが必要との見方さえ急浮上しました。
最後に7月下旬の日銀の利上げです。円安が日本の物価を押し上げているとして、有力政治家が日銀に対し利上げを要求しました。そして日銀も、その要求を聞き入れたと受け止められるかのような説明で、将来的にも利上げを続ける意向を示しました。
株式市場には「売りが売りを呼ぶ」メカニズムがある
金融市場は将来に対する期待から価格形成されます。その意味で、期待とは反対方向のサプライズが出ると、相場は急性発作のように反応します。8月に入ってからの株価急落は、こうしたサプライズから始まりました。そして、株価には、急落すると売りが売りを呼ぶメカニズムが内在しています。投資家の中には、買った株式の相場が下がって、たとえば20%など一定の範囲を超えて下落すると、強制的に売却するルールを持つ投資家もいます。投資信託を運用する機関投資家や信用取引をする個人投資家がこれに該当します。さらにアルゴリズムで動くAIも大量の売り注文を出したと見られています。8月5日の日経平均株価の暴落はこうして起こりました。しかし、企業の実力を考慮しない売りによる株価下落が行き過ぎだったことから、翌日に日経平均株価は史上最高の上昇幅を記録しました。その後はほぼ横ばい圏での推移となっています。
相場の急落で恐怖を経験した投資家には、株価が戻ると売りたくなる傾向があります。こうした売りを「やれやれ売り」と呼びます。これがあるため、当面の株価は上値が重く、ボックス圏*で推移する可能性が高いと思います。しかも、値幅の大きな乱高下が繰り返される可能性もあります。
釣られたくなければ飛びつくな
最終的な株価の行く末は、中東情勢、米国景気、日銀の利上げ、の3つの要因がどう決着するか次第です。現時点では過度な悲観は必要ないと思います。中東情勢は、11月の米国大統領選の後こそ大きく動く可能性が高いと思います。米国景気は、その後の内容の良い景気指標が発表されて、さすがに緊急利下げの必要性はないとの見方が大勢です。日銀も金融市場が混乱する状況では利上げしない方針を示しました。
投資は長期の分散が基本です。相場格言「飛びつく魚は釣られる」を教訓とすべき局面だと思います。
*:株価が上にも下にも大きく動くことなく、まるで箱の中に閉じ込められているかのように一定の価格帯で上下に動くこと。
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