重要なのは、個人的な好悪の情を排して、素直に相場を見ること

米国株価が約4カ月ぶりに史上最高値を更新した。今の米国株価は、先入観や偏見をなくして素直に相場を観るのがいかに難しいかの実例だ。逆に、先入観や偏見をなくして素直にさえ見れば、変幻自在に相場に臨むことができるだろう。ネットの興隆でちまたにあふれる相場材料は玉石混交だ。トランプ政権が続く中、先入観や偏見を排して素直に相場を見るためのポイントをまとめたい。

 

(1)スキーマ

人間の物事の理解には前提として心理学用語の「スキーマ*1」が備わっている。スキーマを知恵として知る日本には「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがある。これは株価予測にも当てはまる。例えば、スキーマが弱気なら、株価に悪い材料を過大視する。一方、良い材料を過小評価、あるいは無視する。このスキーマが相場予測では先入観や偏見の正体である。

特にトランプ大統領の言動に対しては、批判と称賛が入り混じっている。結果的に同氏に対する人々の好悪のスキーマの分布は正規分布とは程遠く、フタコブラクダのように、中立は少なく好きか嫌いかが多い分布になっている可能性が高い。

この結果、トランプ嫌いな人は株価が下がればこれ見よがしに良い、という本来なら関係のない願望を無意識に持つ傾向が強くある。結果的に、トランプ政権の打ち出す政策が、何もかも全て景気を悪化させて株価を押し下げる要因に見えてしまうのである。

*1 スキーマ:過去の経験に基づいて形成された、物事や状況を理解するための認知の枠組みのこと
 

 

(2)トランプ政権の政策

トランプ第二期政権の政策は、(A)移民政策、(B)関税政策、(C)減税政策、(D)規制緩和の4本の柱から成る。これは第一期と全く同じだ。第一期はイメージ的に、政策の経済と株価への影響が、(A)+(B)<(C)+(D)だった。結果的には、コロナ禍の例外的な期間を除くと、景気拡大と株価上昇が続いた。

トランプ第二期政権が発足して約半年が経過した。この間、政策の主体は(A)と(B)だった。トランプを坊主のように憎む人は、(A)と(B)により、憎い袈裟のように景気が悪化して株価も下落することを願った。そして現に、そうであるかのように見える局面がごく短期的にはあった。

 

(3)米国株価史上最高値奪還

しかし、変幻自在なのはトランプ政権の政策修正だった。(A)も(B)も当初の姿からは大幅に修正された。さらにその流れで(C)と(D)も大幅に強化された。結果的に景気に対する見方は大幅に上方修正され、6月から7月にかけて株価は史上最高値奪還と相成った。その原動力となったのが、トランプ大統領を憎む株式ショート筋の踏み上げだったのは間違いないだろう。 

 

(4)結論

今後もトランプ政権は、イランへの介入で見せつけたように、限定的エンゲージメント政策を外交の基本としてトランプ・ドクトリンを推し進めるだろう。この枠内で国内的には(A)移民政策、(B)関税政策、(C)減税政策、(D)規制緩和を進めるだろう。無論、景気拡大と株価上昇に導くのは、従前と全く同じ(A)+(B)<(C)+(D)だ。

株式市場で高いパフォーマンスをあげるには、個人的な好悪の情を排して、素直に相場を見ることが肝要だと考えられる。

 

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りそなアセットマネジメント マーケットレポート内「黒瀬レポート」https://www.resona-am.co.jp/market/report/#tabSwitchC03

 

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