良好な決算発表

8月28日に生成AI向け半導体企業のエヌビディアが5-7月期の決算を発表しました。一企業の決算発表がここまで市場の耳目を集めるのは異例です。時価総額は約420兆円と世界でほぼ常に3位以内、日本最大のトヨタ自動車の約10倍です。結果は、売上、利益、新製品の開発状況、その量産体制確立の見込み、とほぼ全ての面でアナリストの予想を上回る良好なものでした。

 

株価は下落

ただ、株価は大きく下落しました。問題視されたのは、売上高利益率(利益/売上)が低下したことでした。生成AIのサービスを提供する企業の間では、エヌビディアの製造した半導体は品薄状態で取り合いの状態が続いていました。しかし、売上高利益率が下がるという事は、品薄状態が解消に向かっていることを意味する可能性があるからです。

 

バブル崩壊と景気悪化の懸念

生成AI関連企業の株価は、エヌビディアを含めバブルではないかという懸念が高まっています。生成AIのサービスを提供する企業は巨額の投資を続けています。しかし、生成AIを使う企業や個人は、収益性が上がらない、あまり魅力的なサービスではない、としてかつてのような熱狂が覚め始めているのです。それを象徴するのが以下のグラフです。生成AI関連のサービスを提供する企業の株価は大きく上がりました。エヌビディアはここに入っています。しかし、生成AIを使う事でメリットを得ると想定される企業の株価はあまり上がっていないのです。

 

出所:Bloombergの公表データに基づいてりそなアセットマネジメント作成

 

この状態が続けば、いずれは生成AIのサービスも売れ行きが鈍り、巨額の投資を回収できなくなるリスクがあることを投資家は意識し始めたのです。生成AI関連のサービスを提供する企業はエヌビディアやマイクロソフト、アップルなど時価総額が世界トップ級の企業です。もしバブル崩壊で株価が大きく下がれば、投資家が大きな損失を出すことで、消費の冷え込みなど景気悪化につながる可能性があります。景気が悪いから株価が下がるのではなく、株価が下がるから景気が悪くなるという通例とは逆方向になるのです。

 

投資資金引き揚げより循環物色を

過去の事例では、利上げで景気の悪化が展望できるタイミングでバブルが崩壊するのがパターン化しています。その意味では、米国はこれから利下げに入るので状況が違います。また、AIスマホやAIPCの新製品がこれから続々と発売されますし、生成AIには軍需の側面もあります。バブル崩壊の懸念は確かにあります。しかし、あまりに早いタイミングで株式投資を止めて投資資金を引き揚げると、逸失利益が生じるリスクもあります。

投資戦略としては、生成AIのバブル崩壊を意識しつつも、利下げの恩恵を受けるリートや景気敏感株へとローテーションすることが得策だと思います。米国の利下げは世界への波及効果も大きく、新興国が一斉に利下げを加速させる可能性があり、新興国債券も魅力的です。米国のバブル崩壊は大幅な利下げにより円高を伴う可能性が高いため、日本の内需株も有望になると思います。

 

■関連リンク:
りそなアセットマネジメント マーケットレポート内「黒瀬レポート」https://www.resona-am.co.jp/market/report/#tabSwitchC03

 

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