<前編のあらすじ>

68歳になる緑さんは、夫の秀平さん(65歳)と息子の健輔さん(36歳)と3人家族です。夫婦で洋食屋を経営して暮らしています。緑さんが年金について考え始めたのは60歳の時のこと。会社勤めの長い同級生の友人が60歳から年金を受け取れることを知り、うらやましく思ったことがきっかけでした。

そんな中、緑さんは繰上げ受給制度を知り興味を持ちます。夫の秀平さんは「年金を早く受け取ると、年金が減額されるぞ~」と慎重派でしたが、最終的には緑さんは61歳になった時に繰上げ受給することに決めました。

時が流れて、緑さんは68歳。年下の秀平さんも65歳になって年金を受け取れるようになりました。緑さんは「年金の振込先口座を変更したいな」と考えていたので、秀平さんと共に年金事務所へ一緒に行くことにします。

そこで職員からの話を聞く中で、「未請求の年金がありますね。受け取れる年金が他にありますよ」と想定外の事実が発覚。「受け取っていない年金があるってどういうこと……?」と緑さんは疑問を抱きます。

●前編:【「受け取っていない年金があるってどういうこと?」61歳で繰上げ受給を始めた女性。7年後に発覚したまさかの「もらい忘れ」】

65歳からの老齢厚生年金が未請求になっていた

緑さんは、確かに年金を61歳で繰上げ受給しました。その際、繰上げ受給したのは老齢基礎年金でした。4年繰り上げたため、24%(0.5%×48カ月)減額されての受給となります。

しかし、65歳から過去5カ月の厚生年金加入記録に基づいた老齢厚生年金も受けられることになっていて、これが未請求となっているとのことです。緑さんは「だって、私は繰上げしたから年金はもう全部受け取っているんじゃないの?」と思いました。実は、緑さんの場合、老齢厚生年金については繰上げの対象になっていません。

年金の支給開始年齢は生年月日により異なります。緑さんも緑さんの同級生の友人も、生年月日からして60歳から年金が受け取れる世代の人となっていました。緑さんの友人は特別支給の老齢厚生年金(特老厚)を60歳から65歳まで受け取り、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取っています。その友人は厚生年金に加入したことが1年以上あることから特老厚も受給でき、そのような受給のパターンとなっていました。

一方、緑さんは厚生年金の加入期間が5カ月、つまり1年未満でした。その場合は、特老厚がなく、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給となります。そのため、たとえ同世代でも2人の本来の年金の支給開始年齢が異なっていたことになります。