専門家への相談を決める

自治体の広報誌で目に留まった「嫁の相続」という市民講座に参加することにしたのは、そんな経緯があったからです。そこでは主催者である相続診断士の内海さんが、ご自身が特別寄与制度を活用して義父の介護の特別寄与料を相続人の夫のきょうだいに払わせた体験談を赤裸々に語って拍手喝采を浴びていました。

内海さんなら、同じ嫁の立場で今の私のもやもやした気持ちを理解してくれるのではないか。そう思って内海さんに面談をお願いすることにしました。

内海さんは、お話し上手であると同時に聞き上手でもありました。柔らかな笑みを浮かべた内海さんを前にすると、胸の中に貯まった鬱屈(うっくつ)した思いが、言葉となってどんどん口から溢(あふ)れてきました。

中でも義母の部屋で義妹への支援をメモしたノートを見つけた体験は、話しながらもまたあの時の悔しさが込み上げてきて涙がこぼれ落ちました。

「義母は私たちに黙って、義妹一家に少なからぬ支援をしていたんです。こういうことをしておきながら『相続は兄妹平等にするよう遺言書を書いた』っておかしくないですか」

私の感情が治まるのを待ってから、内海さんは私をじっと見てこう言いました。

「窪川さん、今のお話には『不平等な相続』ということ以外にも大変デリケートな問題が含まれています。例えば、教育費や生活費の援助は別として、1人につき年間110万を超える贈与には贈与税がかかります。一方で、妹さんに渡していたのが“少なからぬ金額”だとしたら、そのお金はどこから出てきたお金かという問題もありますよね」

「私は国税でも税理士でもありませんから、そこについて追及したりはしませんけれど、窪川さんは今考えていることについて、まず、ご主人と話し合ってみるのがいいかと思います」

核心を突いた言葉にどきりとしました。ああ、この人は面白おかしく相続の話をするだけの人ではないのだなと思いました。

内海さんはその後、こんなアドバイスもくれました。

「一般論ですが、あなたの息子さんと従姉妹さんとの格差が大きいように思うので、ご主人から義理のご両親に相談して、教育資金贈与の特例(最大1500万円まで非課税)や相続時精算課税制度の非課税枠(年間110万円)を使った生前贈与を受けておいてもいいかもしれませんね」