義姉の気づかい

「この前ね、お中元でアイスが送られてきたのよ。確か、佑香さんが送ってくれたのよね?」

「すてきなお中元ですね。来年から私もそうしようかしら」

曜子は佑香に笑いかける。一つ一つの所作に気遣いが見えて、ありがたい気持ちになる。

「でもね、さすがに一人じゃ食べきれなくてねぇ。それで置いといても良くないから、ご近所さんに配ろうかと思ったんだけど、ちょっとね。これ、安物だから、人さまにおすそ分けするのも恥ずかしくてねぇ」

佑香は2人の会話にずっと背中を向けていた。もうとっくに水気のなくなった皿を拭き続けていた。

「だから、これで良かったら、ぜひ食べてほしいの。ねえ、佑香さん、これ、あげちゃっていいよね?」

美恵子に言われて、佑香は振り返る。

「どうぞ。お好きなだけ食べてください」

「好きなだけって5個入りでしょ? もっと違う言い方はできないの?」

いちいち突っかかってくる美恵子に、怒りで体が熱くなる。

「で、でも! 5個ってことは全員分はないんですよね⁉」

不穏な空気を察知して曜子が無理やり話題を変える。今、この家にいるのは佑香、潤一、蓮、曜子、美恵子、俊之の6人。全員がアイスを食べることはできない。

「じゃあ、私要らないわ。皆で食べて」

言い放った美恵子に、曜子が申し訳なさそうな表情を向ける。

「ホントに良いんですか?」

「良いの、良いの。私ね普段アイス食べないから、困ってたのよ。無駄に箱も大きくて、冷凍室を占拠してたから。皆が食べてくれるのホントに助かるのよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて遠慮なく頂いちゃいますね。私、昔から甘いものに目がなくて」

曜子の笑顔を見て、佑香は心が洗われるような気持ちになる。曜子が喜んでくれてるのなら、何でもいいやと思えてしまう。そんな魅力が曜子にはあった。

佑香は曜子と一緒に冷凍庫からアイスの入った箱を取り出し、箱を開けた瞬間、曜子が驚きの声を上げた。