食事中に打ち明けられた意外な話
入社直後に同期でよく通ったイタリアンのお店でした。昔よく頼んだカプレーゼやカルパッチョに舌鼓を打ち、昔話で盛り上がった後、華菜がこんなふうに切り出しました。
「瑠衣さんとまた一緒に仕事ができて、本当にうれしい」
いよいよ本題かと身構えた私に、華菜が話して聞かせたのは意外な話でした。
「私、中学から大学まで女子校でおっとりしていたから、入社した時に瑠衣さんからものすごく刺激を受けたの。研修の時から同期の男子や先輩と対等に渡り合っていたし、皆で課題学習をした時もちゃんと適材適所でto doを振り分けて……。瑠衣さんみたいになりたいと思って一生懸命努力していたら、2年前くらいから少しずつ結果が出せるようになった。だから、瑠衣さんには本当に感謝してる」
私にしたら「だから何?」という感じでした。
華菜はこんな私を目標に、会社のキャリア支援制度でビジネススクールに通い、雇用保険の教育訓練給付金で中国語を学び、時間があれば勉強会や異業種交流会に顔を出してスキルと人脈を構築してきたのだそうです。私が推し活命だったこの5年間に、です。
華菜としては純粋に私にお礼を言いたかったのだと思いますが、私自身は複雑な気持ちでした。
それに輪をかけたのが、華菜の左手の薬指に輝くリングについて尋ねた時に聞いた話です。なんと、華菜は営業部のマネージャーで社内女子人気No.1の高松さんと婚約中でした。しかも、コロナ禍に始めた株式投資で1500万円ほど貯蓄ができたから、高松さんと共有名義で都心にマンションを買う予定なんだとか……。