<前編のあらすじ>

社会人5年目となる今井瑠衣さん(仮名)は、大学生の頃から日本の男子バレーに熱中していました。そのハマり具合と言えば、実家暮らしをしながら毎月10万~20万円を遠征費用や“推し”グッズの購入に費やしてきたほどです。

そんな今井さんにとって仕事は推し活の資金稼ぎ。自己研鑽やキャリアアップへのモチベーションはほとんどありませんでした。

ところがある時、同期だった中里華菜さん(仮名)がマネージャーとして部署移動してくることが判明します。要領の悪い印象があった中里さんでしたが、一昨年あたりから立て続けに大型商談を成約に導き、マネージャーに抜擢(ばってき)されたのだとか。

この5年間は推し活に夢中で仕事で大した実績を上げていなかった今井さんは、これから上司となる中里さんに鉄槌(てっつい)を下されるのではないかとどんよりした気分になってしまいた。

●前編:【「毎月10万円は推し活に」男子バレーにハマりすぎた女性が“推し最優先の生活”と引き換えに失ったもの】

さえなかった同期がいつの間にか会社のエースに

5年前に今の会社に新卒で入社した際、研修で一緒だった同期の一人が中里華菜でした。よく見れば整った顔立ちなのに、どこかもっさりして垢抜けない感じで、グループワークをしていても、あまりの遅さに何度もイラっとさせられた記憶があります。

その後、私はマーケティング部、華菜は営業部に配属され、ほとんど交流がありませんでした。

驚いたのはその華菜が先月、マーケティング部のマネージャーに抜擢されたことです。4月に就任した社長の「有能な若手や女性に重要なポストを与える」方針の一環とかで、営業部の同期に聞くと、華菜は近年、営業部のエースだったようです。

私は平社員ですから、マネージャーになる華菜は上司にあたります。自分より下だとばかり思っていた華菜が新しい上役とは驚愕でした。