<前編のあらすじ>

今年の春、息子たちが独立して子育てを終えた春子(54歳)と夫の利也(55歳)は犬を飼い始めた。夏になり、犬との生活にもなじんできたと思った矢先、電気代の高さに仰天した……。

犬がいる以上、2人が仕事で家を開けているあいだもずっとエアコンをつけておく必要があり、電気代がとんでもないことになっていたのだ。

光熱費のことでちくちくと小言をいってくる夫に対して、春子もたまっていた不満をぶちまけてしまい、2人は結婚30年を過ぎてから家庭内別居のような状態になってしまった。

●前編:「エアコンを消せない…」子育てを終え、保護犬を迎えた熟年夫婦を陥った「想定外の落とし穴」

家庭内別居

ほとんど家庭内別居のような状態が続き、2週間がたった。8月に入ってから連日35度越えの猛暑日を記録し続けている。

結婚してから30年を過ごすなかで、軽い言い争いくらいならば何度もあったが、口を利かないなんてところにまで発展するようなけんかはしたことはなかった。世間から見ると、仲の良い夫婦だったのかもしれない。けんかをしたことがないせいか、仲直りの仕方すら分からないのだから。

いいや、春子が謝れば仲直りはできるかもしれない。しかしそれではダメだった。ムギのために、春子がここで折れるわけにはいかなかった。

春子は今でもかたくなにエアコンをつけ続けている。利也は不満を持ちつつも、そのことについてとがめることはしていない。実際、利也だってエアコンを消すわけにはいかないと分かっているのだ。

しかしわが家の空気はこのエアコンのせいで、どんどん冷め続けているのも事実だった。