レバレッジ型には注意が必要、どんな人に向いているのか
こうして説明を聞くと、「NVIDIAの株価が値上がりしても、値下がりしても収益を得るチャンスがある」ように思えてくるのではないでしょうか。実際、同ETFの説明サイトでも、「積極的に値上がり益を狙える&下落局面でもリターンを狙える」と書かれていますが、その意味をしっかり見極めなければなりません。
確かに、値上がり局面でも値下がり局面でも利益を狙うことはできますが、それは自分の選んだETFの特性通りに、NVIDIAの株価が動けば、と言う前提が必要だということです。
グラフを2点、用意しました。「DirexionデイリーNVDA株ブル2倍ETF」と「DirexionデイリーNVDA株ベア1倍ETF」の取引価格と、原資産であるNVIDIAの株価を比較したグラフです。いずれも、両ETFがNASDAQ市場に上場された2023年9月13日の値段を100として指数化しています。
そして現在に至るまでの間、NVIDIAの株価は上昇トレンドを続けました。特に今年に入ってからは、好決算を受けて株価が急騰しているのを確認できます。
もしこの時、「もういい加減、NVIDIAの株価も下げに転じるだろう」などと考えて、「DirexionデイリーNVDA株ベア1倍ETF」を選んで購入していたら、どうなったでしょうか。2023年9月13日時点を100とした場合の、「DirexionデイリーNVDA株ベア1倍ETF」の取引価格は、2024年7月3日時点で30.87まで下落しています。つまり70%弱の損失を被ったことになるのです。
確かに、NVIDIAの株価が上がっても、下がっても収益を得るチャンスはありますが、選択を誤れば、これだけの損失を被るリスクがあることを、忘れてはいけません。
とはいえ、「DirexionデイリーNVDA株ベア1倍ETF」はレバレッジが掛かっていない分、値下がりリスクは、マーケットの値上がり率相当が逆に作用するだけですから、株価の上昇率が高くなければ、実はそれほどでもないと考えることはできます。「DirexionデイリーNVDA株ベア1倍ETF」の取引価格が、この半年で70%弱も下がったのは、たまたまNVIDIAの株価が、この半年で急上昇したというだけに過ぎません。
本当の意味でリスクが高いのは、目下、好成績を収めている「DirexionデイリーNVDA株ブル2倍ETF」の方でしょう。
このETFはレバレッジ型といって、原資産の値動きに対して2倍、取引価格が動きます。だからこそ、NVIDIAの株価が直近の高値をつけた6月18日にかけて、同ETFの取引価格も急騰したのです。
ちなみに、同日にかけて原資産であるNVIDIAの株価は、2023年9月13日から198.04%上昇しました。そして、この間に「DirexionデイリーNVDA株ブル2倍ETF」の取引価格は、435.20%も上昇しています。2倍といっても、実際には原資産の値動きに対して2.2倍上昇したことになります。レバレッジ型の場合、前日と当日の上昇・下落率に対して2倍のレバレッジが掛かるため、ある程度、長めの期間で見ると、この手の誤差が生じてしまいます。これはレバレッジ型ETFの商品設計上、仕方がないことです。
そして、一番のリスクは下げに転じた時です。NVIDIAの株価が直近最高値をつけた6月18日から、直近安値をつけた6月24日までの間、株価は12.9%下落しているのですが、「DirexionデイリーNVDA株ブル2倍ETF」の取引価格は、24.8%も下落しました。
上昇局面では2倍のレバレッジ効果を活かして大きなリターンが得られるのですが、逆に株価が下落局面に入ると、この2倍のレバレッジがマイナス方向にも作用してしまうのです。これがレバレッジ型ETFの最大のリスクです。
正直、これだけ大きな値動きのあるレバレッジ型ETFを長期投資の対象にするのは、なかなか難しいと思います。そもそも、たったの4営業日で24.8%も値下がりするような投資対象を、平然と持ち続けられるのは、よほどのリスク耐性を持っている人か、多少の損失ではビクともしないほど大きな資産を持っている人のいずれかでしょう。もし、そのいずれにも該当しないのであれば、一切手を出さないか、出したとしても短期の値上がり益狙いで買うのがお勧めです。