6月24日、東京証券取引所に「グローバルX チャイナテック ETF」(銘柄コード:380A)が新たに上場した。これは、大和証券グループのETF専業運用会社Global X Japanが運用を手がけるETFで、「香港ハンセンテック指数」に連動する日本初のETFとして、中国テクノロジー企業への投資機会を日本の投資家に提供する。

東証で行われた上場セレモニーには、Global X Japan代表取締役社長の藤岡智男氏、大和アセットマネジメント代表取締役社長の佐野径氏、同指数を算出・公表するハンセン・インデックス 最高経営責任者のアニータ・モー氏ら関係者が参加。東証から上場通知書の贈呈を受けた後、上場記念の打鐘を行った。

左から 大和アセットマネジメント 専務執行役員 高橋努務氏、大和アセットマネジメント 代表取締役社長 佐野 径氏、Global X Japan代表取締役社長 藤岡智男氏、ハンセン・インデックス社 最高経営責任者 アニータ・モー氏、大和証券 執行役員 三浦健一氏

変化する中国経済の現状と投資環境

上場セレモニー後に開かれた記者会見に臨んだGlobal X Japanの藤岡氏は、「中国は世界の工場と言われた時代から、消費大国、そして今はイノベーション大国へと変化している」と述べ、特に近年のテクノロジー産業の発展に注目が集まっていると指摘した。

藤岡氏は続けて、「中国の研究開発投資は国家戦略の支援を受けて拡大しており、その規模は米国に匹敵するレベルに達している」。そして、昨今のDeepSeekなどの事例を挙げながら、「AIや半導体分野でのイノベーションの質が向上している」と説明した。

藤岡智男氏

同じく会見に臨んだハンセン・インデックスのモー氏は、同指数の最近の動向について「年初から5月末までの間、同指数は16%の上昇を記録している」と述べ、中国のAI開発に対する投資家の関心の高まりが背景にあることを強調した。

アニータ・モー氏

なおハンセンテック指数は2020年7月に算出が開始され、香港市場上場の代表的なテクノロジー企業30銘柄で構成されている。現在、同指数に連動する計29のETF等が世界12の主要取引所に上場されており、これらの運用資産額は約250億米ドルにのぼっているという。

米国一極集中回避の選択肢に

藤岡氏は、米国株式中心のポートフォリオを持つ投資家にとって、中国のテクノロジー企業への投資はリスク分散の選択肢のひとつになりうると説明。「中国テック企業と米国テック企業の相関は比較的低く、ポートフォリオの多様化に寄与する可能性がある」と述べた。

一方で、世界的な地政学的リスクや貿易摩擦の影響により、投資資金の流れに変化が生じていることも指摘。「米トランプ政権による関税政策などの影響で米国一極集中の状況に変化が見られ、欧州やアジアへの投資資金シフトが徐々に進んでいるなか、同指数がカバーする企業群への投資は有力な分散先になる」との考えを示した。

また大和アセットマネジメント代表取締役社長の佐野径氏は、「資産運用立国実現のため、大和証券グループとして自社とGlobal X Japanが協力してより魅力的な商品・サービスを提供していく」と述べ、日本のETF市場発展に注力していくと意気込みを表明した。

佐野 径氏

同ETFは新NISA成長投資枠の対象となっている点も、個人投資家にとってアクセスしやすい要素といえるだろう。ただし、中国市場特有のリスクや規制環境の変化、地政学的リスクの高まりなど、考慮すべきリスク要素もはらんでいる点にも注意が必要だ。

またGlobal X Japanは同日、東証にもう1つの新規ETF「グローバルX S&P500ETF(ダイナミック・プロテクション」(銘柄コード:379A)も上場した。

これは「S&P 500 Dynamic Covered Call Index(配当込み、円換算ベース)」への連動を目指すETFで、主にS&P500指数の採用銘柄に投資するとともに、短期的に米国株式市場の相場変動が大きいと判断された場合のみ、S&P500指数を対象としたコール・オプションの売却を組み合わせたカバードコール戦略を構築する。