5月29日、大和アセットの「iFreeETF 英国FTSE(フッツィー)100」が東証に上場しました。これは、日本では唯一となる「英国株インデックスに連動するETF」です。日本の個人投資家にとって、米国や中国、インドなどに偏りがちだった海外投資の幅を広げるための選択肢となりそうです。

 

英国株が世界経済の変調に強い「2つの理由」

米国株はこの数年、圧倒的な成長性とパフォーマンスで注目されてきました。しかし、トランプ氏が再び政権に返り咲いたことで、政策リスクや市場のボラティリティが高まっており、投資でも「アメリカ一極集中」であることに不安を感じる投資家も少なくありません。こうした背景のなか、欧州、なかでも英国市場への関心がじわじわと高まっています。

FTSE100とは、ロンドン証券取引所に上場する企業の中から、時価総額の上位100社で構成される株価指数です。エネルギー大手のシェル、製薬大手のアストラゼネカ、金融のHSBCホールディングス、日用品メーカーのユニリーバなど、世界的に知られる企業が多く含まれています。

FTSE100構成銘柄のセクター割合は、金融23%、生活必需品16%、資本財・サービス15%となっています。米国のS&P500がGAFAに代表されるテック銘柄に引きずられやすいのとは対照的に、FTSE100は生活に密着したディフェンシブ(内需)株が多く、景気変動に対して比較的安定した動きを見せることが特徴です。

 

また、現在進行中の地政学リスクの観点から見ても、英国市場は日米など他の先進国にはない優位性を持っています。

トランプ米政権は各国に対し、強硬な関税措置を発動しています。日本は対米貿易黒字国であり、米国からの圧力を受けやすい立場にあります。一方で、英国は米国に対して貿易赤字を抱えており、米国からみれば「米国産を買ってくれている国」です。そのため、トランプ政権は英国に対してはソフトな姿勢を示しています。

こうした背景から、英国株はトランプ政治の不確実性に左右されにくく、投資のポートフォリオにおける“緩衝材”としての役割が期待されているのです。

事実、英国株のパフォーマンスも堅調で、年初から現時点までの上昇率はFTSE100が5.7%と、S&P500(0.3%)、TOPIX(2%)といった他国の主要指数と比べても優れています。

 

ETFの上場セレモニーには、英国のロングボトム駐日大使も出席した(前列中央右、29日 東証)

今回上場したiFreeETF 英国FTSE100は、日本での取引が可能でありながら、ロンドン市場を代表する企業群にまとめて投資できるという点で、投資の「地域的な分散」に関心のある人にとって有用な選択肢と言えるでしょう。

とはいえ、ETFはあくまで「投資の手段」であり、自分の資産形成の目的や投資スタイルに合っているかどうかを見極めることが大切です。米国株に偏りがちだったポートフォリオに、欧州というもう一つの視点を加える――そうした投資スタンスの転換を考えるうえで、今回のETFの登場はひとつのきっかけとなるかもしれません。