債券の世界では、為替に加え金利の影響も大きいのでご注意を
次にご覧いただきたいのは、外国建ての債券に投資するタイプの5年間のチャートです。例としてS&P米国債7-10年指数(残存期間7年以上10年以下の米国財務省証券)をベンチマークとするETFに投資する場合でみてみましょう。
橙色のチャートは、日本で気軽に購入できる東証に上場しているETF(円ベース)です。一方、水色のチャートはそのETFの現地版(米ドルベース)です。そして、青色のチャートは円建てのETFで、為替ヘッジありのタイプになります。
先ほどと同様に、橙色(円ベース)と水色(米ドルベース)のチャートを見てみましょう。うまく説明しやすいように、プラスとマイナスで明暗が分かれています。これも、実は円安の影響による現象です。
ここで債券の基本を復習したいと思います。一般的に、債券は金利が上昇すると価格が下落します。これは、以前の低金利の債券よりも新しい高金利の債券の方が魅力的になるため、以前の債券が売られるからです。このように、債券の価格と金利はシーソーのような関係にあります。
過去5年間でアメリカの10年物国債の利回りは、約2%(2019年5月)から約4.5%(2024年5月)と大幅に上昇しました。つまり、水色の線が示すように、米ドルベースでは債券の価格が下がった時期でした。しかし、私たちから見ると為替レートが約108円(2019年5月)から約156円(2024年5月)と円安になったため、評価額として40%以上のプラス効果があり、橙色のチャートのような結果となりました。
一般的に債券の期待リターンは2~4%と言われていますので、為替相場の影響が大きいとこのような現象が起きます。少し話はそれますが、投資信託ではなく外国債券を購入する場合は、金利だけに着目するのではなく、為替変動があることを頭に留めておきましょう。
最後は数字ではありませんが、為替ヘッジについて説明しておきたいと思います。青色のチャートが”為替ヘッジあり”の商品です。もともと為替の影響を受ける外国株式や外国債券に投資をしたいが、為替相場の影響を受けたくない場合に、為替ヘッジありの商品は向いています。当たり前ですが、ただで為替相場の影響を受けないようにすることは難しく、リターンを得る、もしく損失を避けるために、ヘッジコストと呼ばれる費用を支払う必要があります。
ヘッジコストは金利差によって決まり、以下のような特徴があります。
① 金利差が大きいほどコストが掛かる
② 日本より金利が高い国が投資先だとコストを支払う(マイナス)
③ 日本より金利が低い国が投資先だとコストを逆に受け取れる(プラス)
今の日本は低金利がまだまだ続いていますので、③はなく②になります 。しかも先ほどお伝えしたように、アメリカの金利は上昇し、金利差が広がりました。結果的により①のコストが上昇しましたので、橙色(為替ヘッジなし)と青色(為替ヘッジあり)という差が生まれてしまいました。 確定拠出年金やNISAでも、”為替ヘッジあり”と”為替ヘッジなし”の商品が並んでいますので、なんとなく「あり」の響きの方がよく感じてしまうかもしれませんが、特性を知って投資していただければと思います。
今回は数字をきっかけに、数字の使われ方や為替の影響について触れてみました。相場は良くも悪くも変動が大きいほど、喜びを感じる人が多いように思いますが、個人的には多くの方にとって相場に振り回されない方が、投資を長く続けるコツのように感じますので、少しでも参考になればうれしいです。