夫との出会い

関西地方在住の行田優芽子さん(仮名・40代)は、高校を卒業すると派遣会社に登録。レジャー系企業で働くことになった。そこで教育担当になった2歳年上のアルバイトの男性は、まだ19歳の行田さんに優しく丁寧に仕事を教えてくれた。

出会って2週間ほどで交際に発展し、まもなく同棲を始め、2カ月ほどたった頃、初めて彼の実家に遊びに行くことに。当日、彼と2人で実家を訪れると、「こんにちは! どうぞ、上がって!」と母親は優しく出迎えてくれた。

1時間ほどして帰ることになり、去り際に行田さんは来た時は緊張のあまり見落としていたことに気付く。家の中の至る所に宗教的な物が置かれていたのだ。

その帰り道、思い切って彼に言った。

「◯◯くんの家、宗教の物がたくさんあったけど、そうなの?」

すると彼は答えた。

「ああ。俺も子どもの頃は母さんに連れられて通っていたけど、俺はもう信仰してないよ。それに母さんもきょうだいも、絶対に勧誘して来ないから大丈夫だよ」

行田さんは、彼がうそをつく人ではないことを知っていたため、安心した。しかし彼はただ、自分の母親やきょうだいのことを分かっていなかっただけだった。

スープの冷めない距離

行田さん26歳、彼28歳で入籍すると、義母は行田さんに頻繁に連絡してくるようになった。

2人が暮らすマンションの契約更新が迫っていることを知った義母はこう言った。

「私たちが暮らす賃貸マンションは、親子で契約したら、子世帯は家賃が半額になるのよ」

彼は「半額ならいいな」と乗り気。しかし行田さんは、義実家との距離が数分程度になることに嫌な予感しかしなかった。

2人で内覧へ行くと、夫は気に入った様子。しかし契約書に書かれた金額を見ると、明らかに半額ではない。行田さんが事務所の人にたずねると、「半額になるなんて制度はない」と言う。

2人は「半額じゃないなら断る」ということが恥ずかしく、結局契約してしまった。

その後義母は、「私は半額になるなんて言ってない」と言い張り、帰宅後、変に思った行田さんが「絶対に言ったよね!」と憤ると、彼は「母さん、天然だからなあ」と笑った。