遺産分割もなされず続く冷戦
その後の村田さん一家は今もなお冷戦状態が続いているようだ。相続財産の500万円はいまだに遺産分割がなされていない。正一さんは現在も智徳さんと啓さんの両名との間を取り持つように2人と連絡を取り合っているがそれもいつまで続くか分からない。
彼らの遺産分割が終わったことを示す遺産分割協議書は私が作成することになっているが、その日が到来するのはかなり先になりそうだ。
もしかすると、このまま話し合いが行われることなく時間だけが経過する可能性もある。そうしているうちに3兄弟のうち誰かが亡くなり、その子どもたちが代理で相続人として話し合いに参加するようになり、事態はさらに悪化することになるかもしれない。
兄弟姉妹のうち特定の1人だけが生前に優遇されていると特別受益の問題が起こり、村田さん一家のように相続争いが起こりかねない。
親が考えている以上に、子どもたちは兄弟間で親にかけてもらったお金のことを気にしているものだ。兄弟姉妹のうち特定の子に対して特にお金をかけていた場合、一度、特別受益の存在について確認しておくべきだろう。
もし、特別受益に該当することが考えられる場合、事前に遺言書を作成して相続分を指定したり、専門家に相続分をどうすべきかの相談したりなどの対応を検討いただきたい。強固な兄弟姉妹の絆も、時に相続問題で簡単に崩れてしまうのだから。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。