父との確執

むかしから、父親が苦手だった。

自分の価値観を押しつけてくるところがあり、高校生の頃はよく衝突した。決して数は多くはないが、父親から殴られたこともあった。

近藤があまり実家に帰らなかったのは、父親の存在が大きい。

とはいうものの、帰省してから数日のあいだはリラックスできた。

父親は「あまり小言を言わないように」と母親から言われているらしく、近藤がリビングのソファに寝転んでいても何も言わなかった。

しかし、やはり家でのんびりしている近藤が気に入らないらしく、嫌な顔をむけてくる。腹は立つが、これぐらいならそこまで気にならない。

生まれてから18歳まで過ごした故郷は傷心の近藤を優しく癒やしてくれた。昔は毎日のように見ていた田舎町の光景がやけにまぶしかった。

気になるのは子どもの少なさと高齢者の多さだった。

近藤のように進学や就職で町を出て行ってしまう人が多く、ほとんどの場合もう戻ってこないという。そして、町には近藤の両親のような老人が残される。県内でも高齢化が深刻な地域だと言われているようだ。

そんな町だから新しい商業施設ができるはずもなく、この町の住民はちょっとおしゃれな服を買ったりするときは、車で30分ほどのところにある大きなショッピングモールまで向かうという。

近藤もそのショッピングモールに行ってみることにした。一緒に行かないかと両親を誘ったが、人が多くて疲れると断られてしまった。