分配金は変動し、配当がないことも

では、分配金利回りが年平均5%で支払われるのを想定している場合はどうでしょうか。

これも現実的にはナンセンスです。なぜなら分配金も変動しますし、時には配当されないケースもあるからです。常に5%相当の分配金が支払われる保証は、どこにもありません。

また、ここが預金の利息と投資信託の分配金の大きな違いだと思うのですが、預金は利息が発生しても、元本は減りません。100万円の元本に対して5%の利息が支払われた場合、それを仕分けると、元本100万円と利息5万円になります。あくまでも元本は100万円のままです。

ところが投資信託の分配金は、過去の運用益の一部を分配するものなので、分配金が支払われた後の基準価額は「分配落ち」といって、支払われた分配金の額だけ値下がりします。たとえば、1万4000円の基準価額で2000円の分配金が支払われると、分配落ち後の基準価額は1万2000円になるのです。

この時、支払われた分配金でもって同一の投資信託を買うことを「再投資」と言います。再投資効果をもって複利運用のようなイメージで捉えている人もいるようですが、これもおかしな話です。

再投資といっても、それまで積み上げられた利益の一部をファンドから抜き取り、またそこに戻すだけですから、資金フローの観点から考えると、無駄な資金移動をさせていることになります。

しかも再投資の場合、支払われた分配金に対して、その20.315%が税金として差し引かれた後の残額を再投資しますから、税金が差し引かれる分だけ、運用効率が下がります。

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これらの点から考えても、投資信託の「複利効果」を真に受けるのは止めた方がいいでしょう。「投資信託を長期間、複利で運用すれば資産が大きく増える」などと説明している金融機関や、自称お金のプロが言っていることにだまされないようにして下さい。