厳密ではない複利の計算
恐らく、投資信託の複利効果を主張する人は、年平均のリターンを5%に想定して、といった話になるのかと思いますが、厳密に考えれば、投資信託の収益性を複利で計算するのは、かなり乱暴です。
まず預金は元本が目減りしませんし、元本が100万円であれば、あくまでも100万円に対する利率によって、利息が計算されます。そして、利息が毎年元加されて複利運用されていきます。
ところが投資信託で「平均リターンが5%」といっても、これが何を指して5%と言っているのか、不透明です。基準価額が年平均5%で上昇することを想定しているのか、それとも、分配金利回りが年平均5%で支払われるのを想定しているのかが、今ひとつよくわかりません。
それぞれについて考えてみましょう。
投資信託の基準価額は日々変動している
まず、基準価額が年平均5%で上昇することを想定しているのだとしたら、前提条件としてあまりにも見通しが甘いと言わざるを得ません。なぜなら投資信託の基準価額は日々、変動していて、時にはマイナスになることもあるからです。
投資信託の基準価額の値上がりは、運用益が積み上がっていることを意味します。逆に基準価額が値下がりすると、値下がりの程度にもよりますが、過去の運用で積み上がった運用益の一部、ないしは全部が失われることになります。リーマンショック級の金融ショックが起きたら、運用益どころか投資した元本が半分、あるいは3分の1に目減りしてしまうことも起こり得ます。
それだけのリスクがある以上、元本が保証され、かつ利率が一定の預金による複利運用と同じ目線で、投資信託の複利運用を考えるのは、ナンセンスでしょう。