林さんの過去と現在をつないだ「金の糸」

筆者は、林さんにインタビューするうちに、林さんが最終的にご自身のセカンドキャリアとして選択された「グリーフケア支援」の中核である「人に寄り添い、人を癒していく」ということが、過去の林さんのキャリアともつながっているように思えたのです。そこで林さんにいくつかの質問をしました。


 

――ご両親はどのようなお仕事をされていましたか?

「はい、自宅で商売をしていて、身近にお客さんが来られるのを見て育ちました」

――学生時代はどのような学生でしたか?

「勉強は二の次で、手品を研究するクラブ活動ばかりしていました」


 

どちらも納得の回答です。林さんは新卒で百貨店業界への職業選択をされました。話していると、丁寧で優しい話しぶりに感心します。それもお客さんを身近に感じる環境で育ったからかもしれません。学生時代に手品に熱中していたのも、人が驚き、楽しんでくれる姿が純粋に好きだからでしょう。百貨店の業務、新規事業での高級コンビニエンスストアにかかわる業務、人材ビジネス事業、これらもすべて人に関する仕事です。

こうして見ると、「人に関わり、喜ばせ、楽しい気持ちになってもらう」という要素が共通しています。

キャリアコンサルタントで学ぶ理論には、「金の糸」という、過去の自分と今の自分、そして未来の自分は1つの糸でつながっている、その糸を見つけることで、自分の目指すことが分かってくる、という考え方があります。

林さんは昔から大切にしてきた「人を喜ばせ、寄り添っていく」という糸があり、今後もその糸でつながる道を歩もうしているので、まさに金の糸でつながったセカンドキャリアを選ばれたということになります。


 

林さんからもう1つ素敵なお話をお聞きしました。

人を癒すということは、一般的にケアする側の能動的な行為で、ケアされる側は受動的な態度である、というイメージがあります。

しかし、実は両者には「相互の関係性から起こるダイナミズム」により、「癒える」という自発的に湧きおこってくる「中動態」の状態が存在するというのです。難しく聞こえますが、要するに「互いに癒される」「互いに気付く」という相互作用があるということです。

「人の役立つことをすれば、自分も何か得るものがある。だからお互いに幸せなのだ」という大切なことを教えていただきました。