<前編のあらすじ>

大手百貨店に新卒で入社した林さん。毎日忙しく働いている時期に身体に違和感を覚えて病院で検査した結果、「スキルス胃がん」が発覚します。その後は手術と苛酷な闘病生活を経て、仕事に復帰できるまでに回復しました。闘病中、死に向き合う中で芽生えた「人をサポートしていきたい」という目標を実現すべく、セカンドキャリアに向けて行動を起こします。

●前編:【仕事一筋・40代男性に突然の「がん発覚」闘病中に気付いた“本当にやりたいこと”】

資格勉強にボランティア活動、グリーフケアの勉強を開始

林さんは「人をサポートしていきたい」という思いを実現させるために、まずキャリアコンサルタントの資格を取得しました。そして、会社の業務として就職活動に関するセミナーや相談、カウンセリングを行いながら、社員の悩みや課題に寄り添って実務で知識を活かしました。

その一方で、病気の方は再発・転移こそ起こっていませんでしたが、まったく心配がなくなったわけではありません。ただし、無理をしなければ普通に生活ができるレベルにまで回復していました。その自身の経験もあって、当時林さんは“病気と仕事の両立支援”のボランティア活動を行っていました。

ある日、ボランティア仲間の方から、上智大学に「グリーフケア研究所」という組織があることを知ります。
※「グリーフ」とは様々な悲嘆のこと

昨今、高齢化に伴う多死社会や、災害・事故・病気などで大切な人を失い、悲しみに打ちひしがれている人が増大しています。同時に、そのような方々に寄り添い、悲しみを癒すことへの社会的ニーズも高まっており、先に挙げた研究所では、グリーフに耳を傾け寄り添っていく人材を養成しているそうです。

活動に共感した林さんは、その研究所に2年間通い、2021年3月にグリーフケア人材養成課程を卒業されました。

セカンドキャリアに選んだのはグリーフケアの活動

そして、着々とセカンドキャリアへの道を切り拓きながら、ついに60歳の定年を迎えました。がんになりながらもなんとか定年まで勤務できたことに感謝しつつ、定年をきっかけに会社を退職し、自分のセカンドキャリアは「グリーフケアの活動」を中心に進むことを決意します。

ところがこの時、コロナの影響で会社の業績が悪化し、赤字に陥ることが予想されていました。林さんは会社に退職の意向を伝えたものの、何とか黒字になるまでは協力してほしいと懇願されてしまいます。なんとか2023年には黒字に転換したため、来年度からは新たなセカンドキャリアをスタートされる予定です。