他人の投資方法を参考にする際の注意点

私の長い愚痴を聞いてくれた後に、今泉さんはまずこう指摘しました。

「それでも、片桐さんは100%証券会社が悪いとは言わないわけですね?」

「まぁ、営業マンの話をうのみにした私自身にも非はありますから」

すると、今泉さんは穏やかな笑みを浮かべてこう言いました

「さすが百戦錬磨のビジネスマンですね。私は、今泉さんのような方は2度と同じ過ちを繰り返さない確率が極めて高いと考えています」

今泉さんは続けてこんな話を聞かせてくれました。

アベノミクス以降、株式デビューに失敗して自分たちの事務所に相談に来る人が増えている。その大半が、私のように証券会社の営業職員の勧める銘柄を買ったり、インフルエンサーの投資手法を真似したりしたのにうまくいかなかったというものなのだとか。

「しかし、投資のタイミングも投資リスクに対する耐性も一人ひとり違います。ビギナーズラックがあるかもしれませんが、人まねで勝ち続けられる世界ではないんです。私は別にインフルエンサーの方々を否定するわけではありません。『この人のここがすごい!』と思うなら、どんどん取り入れればいい。でも、ただまねをするのではなく、自分仕様にカスタマイズしていく必要があります。ビジネスだって、そうではありませんか?」

今泉さんにそう言われると、ぐうの音も出ません。

今泉さんはご自身が大手証券の営業職だった経験から、「証券会社の営業マンもお客さまのために一生懸命頑張っています。一方で、彼らには取扱額や個別商品などのノルマがあり、お客さまと利害関係が一致しないことも度々あるんです」といった裏話も教えてくれました。

その上で、「私は純粋にお客さまの利益を追求したくてIFAになったんです」と聞かされ、温和な今泉さんの内に秘めた情熱を垣間見たような気がしました。