父親の負担になった母親の“不安定さ”
家庭環境に辟易していたのは父親も同じだった。若い頃から情緒不安定だった母親は、父親の負担になっていたのだ。
「私が物心ついた頃から、母は周囲の気を引くためなら平気で嘘をついていました。特に、ポリープができたとか下血が出たなど、同情や心配を誘うような嘘を頻繁に。あり得ないほど見栄っ張りで、自分の思い通りにならないと、金切り声を上げて泣きわめくのです」
溺愛のあまりに、兄の交友関係にも口を出し、何度も交際中の女性と別れさせた。そのうえ、母親は“ある宗教”にのめり込んでいた。兄が幼い頃、身体が弱く入退院を繰り返したことがきっかけだが、兄の身体が丈夫になっても、お参りとお布施は続いた。
小栗さんと違い、離婚しない限り家を出られない父親は、こうした状況に疲れ果てて自暴自棄になったのだろうか。働き者で頭の回転も速く、手先が器用な人だったが、転職を繰り返し、ギャンブルやアルコールに依存し、借金までするようになった。
途端に悪化した両親の経済状況
母親の宗教依存に父親のギャンブルやアルコール依存。実家の経済状況は最悪な事態に陥っていた。光熱費や納税の滞納が続き、両親が70代になる頃、ついに財産の差し押さえ通知が届いた。
小栗さんは夫に内緒で両親に資金援助をしていたが、そのお金も母親は宗教のお布施に使ってしまっていた。兄は車で30分ほどのところに住んでいたが、大学進学で家を出て以降、全く実家に寄り付かなくなっていた。
70歳を超えた父親は軽い認知症と診断されていたが、大酒を飲みながらも母親を見守っていたようだ。母親が「お参りに連れて行け!」と喚くたび、飲酒の最中でも“教団”に送迎させられていた。しかし、父親が飲酒運転で捕まっては警察に呼び出される兄からすると、たまったものではなかった。