私は都内の病院に勤務していて、コロナ禍の3年間はこれまでの人生で一番忙しい日々を過ごしました。それもあって、滋賀県の実家で一人暮らしをしている母とは年に数回電話をする程度になっていました。
母は特に持病もなくもともと几帳面な性格のため、父が亡くなった後もほとんどの家事を自分でこなし、自立した生活を送っているように見えました。
電話でも「定期的に病院に通っている」「地元の商店街の店がどんどん閉店していくので、テレビの通販でよく買い物をするようになった」と話をしていて、すこぶる元気そうでした。
ところが先月、軽い脳出血で倒れ入院したのを機に、母の周りでとんでもないことが起きていたことに気づいたのです。きっかけは母の預金通帳を見たことでした。
2000万円近くあった預金が、この3年間で半分近く引き出されていたのです。母は月額15万円ほどの年金を受け取っていて、通常の生活費はそれで十分賄えるはずです。テレビ通販でも洋服やサプリメントを購入する程度で、特段、ぜいたくをしている様子もありません。
母に聞いたところ、兄の娘(私の従姉妹)の八重子さんに渡したと言うではないですか。八重子さんに尋ねると、約800万円を受け取ったことは認めたものの、詳しい経緯は話してくれませんでした。
金額が金額だけにこのまま放置していくわけにはいかず、頼った専門家が、妻から紹介されたファイナンシャルプランナー(FP)の南さんでした。
●「叔母ちゃんがくれた」八重子さんの言い分とは?
※前編【部屋は乱れ、貯金は半減…働き者で几帳面な母に現れた“ある異変”】からの続き
八重子さんに説明を求めると…
南さんと連絡を取り、一緒に八重子さんと会うことになりました。数日後、南さんが押さえた地元のホテルの部屋で、話し合いの場を持ちました。南さんは八重子さんに会ってあいさつを済ませると、いきなりこう切り出しました。
「西崎さんのお母様、つまり、あなたの叔母様から800万円を贈与されたとおっしゃっているそうですね。年間110万円を超える贈与には贈与税が課税されることをご存じですか? しっかり税務署に申告されていますか?」
それを聞いて、八重子さんの顔色がみるみるうちに変わりました。
「贈与を受けたつもりはないんです。ちょっとお借りしただけで……」
南さんがさらに畳みかけます。
「でも、こちらの西崎さんがあなたに尋ねた時、叔母様が『持っていけ』と言ったんだとおっしゃいましたよね?」
「それは……」。追い詰められた八重子さんが吐露したのは、次のような話でした。