西崎昇さん(仮名)は一人っ子で、来年80歳になる母親が郷里の滋賀県の実家で一人暮らしをしています。自宅の近くに呼び寄せることも考えましたが、働き者で几帳面な母は一人でも楽しく暮らしているようだったので言い出しそびれていました。

そうこうするうちにコロナのパンデミックが勃発します。勤務先の病院がコロナ感染症患者を受け入れたことから、事務方の西崎さんも「これまでのビジネス人生で一番多忙」な3年間を過ごすはめに……。忙しさにかまけ、母親とのコンタクトもぐんと減ってしまいました。

仕事がようやく一段落したと思ったら母親が脳出血で入院。久しぶりに実家を訪れた西崎さんは、散らかった家の状態から母親の異変を感じ取ります。

さらに、母親の通帳を見たら、1000万円近くが引き出されていることに気づいたのです。母親のお金を詐取していたのは、西崎さんとも顔見知りの従姉妹でした。開き直る従姉妹に業を煮やした西崎さんが頼ったのが、高齢者問題に詳しいお金の専門家でした。

〈西崎昇さんプロフィール〉

東京都在住
51歳
男性
病院勤務(事務職)
ソーシャルワーカーの妻と2人暮らし
金融資産1500万円

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私は都内の病院で事務長補佐を務めています。勤務先の病院がコロナ感染症患者を受け入れてきたこともあり、現場の医師や看護師ほどではないにしても、この3年間は相当なハードワークを強いられました。

それもあって、滋賀県の実家に一人で暮らす実母とは電話で年に数回話す程度でした。私はきょうだいがおらず、妻も医療従事者だったため、「様子を見に行ってもらえないか」と頼む相手がいなかったのです。

ですから、先月母が脳出血で倒れた時に久しぶりに実家に戻り、衝撃を受けました。若い頃の母は几帳面できれい好き。家の中は整理整頓が行き届き、台所や風呂場もピカピカに磨いてありました。

しかし、およそ3年ぶりに訪れた実家は「ゴミ屋敷」というほどではありませんが、畳の上にも衣服や書類、書簡などが散乱した何ともひどい状態だったのです。