大和証券の人材力とハイブリッド戦略
証券会社をはじめ、金融業は「人材が全て」といえるサービス業だ。学生から高い就職希望を集め続けることは、それだけ優秀な人材の獲得につながるといえる。業績面では、営業収益で依然として最大手の野村證券との差は大きく、また、証券口座数では新興のネット証券がはるかに多くの口座を獲得している。証券会社としての経営は決して楽ではない。現在、大和証券グループは、本業である証券業とはリスクプロファイルが異なるビジネスに取り組むことで、証券業とのシナジーを生みながらグループ全体利益の安定的な拡大を図る「ハイブリッド戦略」に取り組んでいる。不動産アセット・マネジメントビジネスや銀行ビジネスなど、ハイブリッドビジネスから得られる収益は2021年度には収益割合が46%にまで高まった。このような多様なビジネスを支えるのもまた、人材あってこそだ。
「社員に優しい会社」を推進した鈴木茂晴氏はその後、日本証券業協会の会長となった。
会長退任後も、先日は自らが理事長をする筑波カントリークラブで岸田総理とともにゴルフを楽しんでいる。なお、タレントの鈴木凛さんは鈴木茂晴氏の娘である。
2024年から始まる「新NISA」は、伝統的な証券ビジネスの再加速が期待されている。鈴木茂晴氏が2005年から推進した「社員に優しい会社」が、顕著に人材を引き付けるようになり、その人材がこれから戦力化するステージを迎える。新NISAスタートという時代の追い風を得て、大和証券の人材戦略がその結果を出すことができるのか?見ものだ。
文/ 徳永 浩