バブル崩壊と証券業界

大和証券は、日本がバブル時代といわれた1980年代に「大手4社(野村・日興・大和・山一)」の一角を占める証券業界のリーダーだった。バブル崩壊後に、山一証券が経営破たんし、日興証券が三井住友銀行の子会社SMBC日興証券になっていく中で、大和証券は野村證券とともに大手証券としての体面を保ち続けた存在といえる。ただ、大和証券は1998年に住友銀行(現三井住友銀行)と資本・業務提携で合意し、大和証券グループ本社を持ち株会社にする体制にするとともに、法人部門を住友銀行との共同出資会社に分離したことがあった。2009年に三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)との資本・業務提携を解消した頃が総合証券としての正念場だったと考えられる。パートナーだったSMBCは、かつてのライバルであった日興証券を買収し、大和証券を明確な競合社と位置付けた。その後、大和証券は2012年4月に法人専門の証券子会社を吸収合併し、リテール・ホールセール一体の総合証券に戻っている。

女性活躍、ワーク・ライフ・バランス推進が学生人気の向上へ

大和証券の人事制度の革新は2005年、当時の鈴木茂晴社長が、女性が活躍する職場づくりを検討する「女性活躍推進チーム」を発足させた頃に本格化した。2007年には「19時前退社」の全店での励行を始めるなど、業界で先行して働き方改革に取り組み始めた。2008年には鈴木社長がヘッドを務める「ワーク・ライフ・バランス推進委員会」を設置し、2009年に業務職(一般職)から総合職への転向を可能にする「職制転向制度」を拡充した。このような結果、年次休暇の取得率が向上し、月ごとの労働時間も約10時間削減されるなど、社員の働き方が変わった。また、CFP(認定ファイナンシャルプランナー)の資格保有率が金融業界でトップを占めるようにもなり、学生の就職企業人気ランキングも向上することにつながっていった。