ようやく始まった金利上昇の波。

長年、日本を悩ませてきた低成長・低賃金といった経済の“悪循環”を断ち切るチャンスかもしれません。金利が上昇する今こそ、日本経済が本来の強さを取り戻すヒントが見えてきます。

BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏が、日本経済の現在地と成長の道筋を読み解きます。(全4回の4回目)

●第3回:日本で800円の朝食が米国では約3倍…なぜこれほどの価格差があるのか?

※本稿は、中空麻奈著『金利上昇は日本のチャンス』(ビジネス社)の一部を抜粋・再編集したものです。

ユニコーン企業を育てる

「テスラ1社で日本の自動車会社全社の時価総額を上回った」、「GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)の時価総額が日本の上場企業すべてのそれを上回った」といったことが時折、報じられる。とはいえわが国も、かつてはトヨタ車が世界を席巻し、ソニーのウォークマンが世界中の若者を虜にした時代が確かにあった。

その当時は「日本叩き」という言葉があったように、米国政治や活動家のパフォーマンスとして東芝の製品をハンマーでたたき壊された。また三菱地所がロックフェラーセンターを買収して、米国の人々に危機感を抱かせたりもした。それだけの栄華を誇り、高い技術力を有していたはずの日本の製造業は、プレゼンスも時価総額も凋落してしまった。

よくよく考えてみれば、日本がバブル経済下で世界を席巻していたビジネスの多くは、日本がゼロから生み出したものではない。自動車しかり、家電製品しかり、である。ソニーのウォークマンは日本の製造業の優秀さを世界に知らしめることになったが、そもそもカセットテープの録音・再生機を世界最初に発明したのはドイツと言われている。

なぜ、日本には巨大IT企業GAFAが生まれないのか。これは、いわゆるゼロイチで立ち上がったビジネスが日本に少ないのはなぜかを考えることと同根かもしれない。