やっぱり、と思いました。しかし、その時点で私は58歳、定年まで2年しかありません。「私はどうしたらいいのでしょう?」という問いかけは、かなり情けない声になっていたのではないかと思います。「大丈夫です。一緒に対策を考えましょう!」。先野さんのエールが芥川龍之介の小説に出てくる蜘蛛の糸のように感じられ、私は迷うことなく、それにしがみつきました。

明瞭な完済プラン、さらに再就職先の紹介まで!

ローンの残債は定年退職の時点で約1300万円。先野さんは、そのうち1000万円を退職金から返済し、ボーナス併用払いをやめて65歳完済を目指すプランを提案しました。

「公的年金の受給が始まる65歳までは働いて、こつこつローンを返していきます。65歳以降、栗橋さんは同い年の奥様の分と合わせて月額23万円程度の年金が受け取れます。ご自宅は確保されているわけですから、健康に気を付けてしっかり家計管理をしていけば、十分暮らしていけますよ。ただ、老後資金は定年退職時点で1000万円(貯蓄500万円+退職金の残り500万円)とやや心もとないので、この5年間でなるべく上積みできるよう頑張りましょう」

先野さんの話を聞いて、65歳までなら何とか仕事を続けていけそうな気がしてきました。しかし、その際ネックになるのが職場の問題です。ここまで来たらプライドも何もないと先野さんに会社や社長との関係について正直に打ち明けたところ、思いがけない言葉が返ってきました。

「栗橋さんは営業だけでなく総務や法務のご経験もおありですよね? 私、ちょっと考えるところがあるので、そちらについては後日、お話しさせていただきます」

そして、後日、なんと私に新しい職場まで紹介してくれたのです。聞けば、先野さんのクライアントで70歳を超えた会社の大番頭が引退を考えているところがあり、その後釜候補の1人として私を推薦したとのことでした。