〈前編のあらすじ〉

妻と2人暮らしの栗橋浩さん(仮名)は今年還暦を迎えたばかり。2年前、同じマンションに住む親しい夫婦が突然失踪し、その原因が「住宅ローン破産」だったことを知ります。栗橋さんにもまだ10年以上ローンが残っていたことから、とても人ごととは思えず危機感を覚えました。

定年後も返済し続ける必要がある一方で、貯蓄はせいぜい500万円ほど。退職金を返済に充てることもできますが、それだと老後資金が足りなくなります。「このままだと一生働かざるを得ないのでは」と、目の前が真っ暗になり鬱々としていました。

そんな栗橋さんの様子を気にかけた長女の夫が、「ぜひ紹介したい人がいる」と言ってきて……。

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定年まで2年、「自分はどうしたらいい?」

長女の夫が紹介してくれたのは、先野さんという30代の男性でした。先野さんはファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ税理士。中小企業の税務支援をしているうちに、経営者の家計や資産運用についても助言が必要と感じるようになりFP資格を取得したということでした。市役所に勤務する婿とは市民対象の税務相談を通じて知り合い、年齢も近いことから親しくなったようです。

最初の面談は、私の仕事やわが家の家計、資産などに関するヒアリングが中心でした。先野さんは私の心配事にひとしきり耳を傾けた後、穏やかな声で言いました。「栗橋さん、今、そこに気付かれたのは正解でした」。そして、こう続けたのです。

「昔の住宅金融公庫ローン、今は『フラット35』というのですが、平均完済年齢は73歳です。定年後、ボーナス併用払いを続けている人も少なくありません。キツイですよね。その結果、コロナ禍で自宅を失う高齢者の方が増えているんです」