年の瀬も押し迫った2021年12月、見慣れない名前を冠した投資信託が1000億円を上回る資金を集め、鮮烈なデビューを飾った。そのファンドとは、アセットマネジメントOneが展開する「ファンドスミス・グローバル・エクイティ・ファンド」。運用を担うのは、「英国のウォーレン・バフェット」ことテリー・スミス氏が2010年に創業したファンドスミス社だ。
同社は、①Buy good companies=優良企業に投資する、②Don’t overpay=割高な水準は避ける、③ Do nothing=頻繁な売買を行わない(「ファンドスミス・グローバル・エクイティ・ファンド」目論見書より)という投資哲学を掲げ、旗艦ファンドでは厳選した20~30銘柄に投資を行う。
運用会社と、実際に運用している会社が違う投資信託
さて、この段階で「運用会社はアセットマネジメントOneなのにどういうこと?」と、困惑した方も少なくないだろう。当ファンドの運用会社であるアセットマネジメントOneは、投資家から集めたお金をどこにどのように投資するかを考え、受託会社に指示する役割を担う。実は、投資信託運用においては、運用会社が「どこにどのように投資するか」を検討する過程で、外部の機関に運用を委託することも認められている。これを外部委託運用という。
当ファンドの場合、アセットマネジメントOneがファンドスミス社の実績を評価し、運用を委託したという経緯である。いわば「餅は餅屋」の投信運用と言えよう(外部委託運用の仕組みについて、詳しくはこちら「運用のアウトソース化とは? 投資信託への理解を深める運用会社の実態」を参照)。
外部委託運用自体は、日本の投信市場で20年以上前から認められており、決して目新しいものではない。しかし最近は、この「ファンドスミス」のように、日本における知名度がない海外の運用会社の名前をあえて前面に出し、結果として一定の支持を集めるヒット商品が誕生している。
先行例は、三菱UFJ国際投信が展開する、ベイリー・ギフォード社運用のファンドシリーズだ。スコットランド・エディンバラに拠点を構えるベイリー・ギフォード社は、成長株への長期投資で100年以上の歴史を誇る、欧州の老舗運用会社である。非公開のパートナーシップ制という組織形態を取り、株主の意向や短期の業績に左右されずに長期投資に徹することができるという点に強みを持つ。日本においては、1989年に三菱UFJ信託銀行(旧東洋信託銀行)との間で合弁会社を設立しており、先述の通り、三菱UFJ国際投信が計5本の公募投資信託を展開している。
このうち、特化型運用(1銘柄あたりの構成比率が10%を超える、または超える可能性のある銘柄を含む)を行う「ベイリー・ギフォード世界成長企業戦略/SMT.LN外国投資証券ファンド」(愛称:クロスオーバー・グロース)は、「適切な運用資産規模での運用を継続する」ため、2021年9月の設定から3カ月を待たずして新規申し込み受付が一時停止されることとなった。また、2019年設定の「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)」は、設定来の良好なパフォーマンスに加え、昨今のESG投資促進の流れにも支えられ、2000億円規模まで残高を伸ばしている。