積立が終わってもかかる「口座管理料」に注意
iDeCoは、残高がある間はずっと口座管理料がかかります。掛け金の積立をしながら加入している間よりは安いのですが、毎年800円程度、保有している資産の一部が自動的に売却されることで徴収されていきます。
ということは、口座管理料以上に運用益が出なければ、受取額は年々目減りしてしまいます。iDeCoの受取開始可能時期の繰り下げを有効活用できるケースは、70歳以降もバリバリ働いて、公的年金もiDeCoも受け取らなくても生活できる方が、受け取りを先送りするために使うという場合くらいしか想定できません。
受取開始可能時期の繰り下げを検討するなら、iDeCoよりもまずは公的年金です。ひと月繰り下げするごとに受取額は0.7%も増え、その増えた額を死ぬまで受け取ることができます。一方、iDeCoは繰り下げたとしても増えるかどうかはマーケット次第。その上、残高がなくなったら受け取りは完了となります。
ちなみに、iDeCoにも受取用に終身年金が用意されているプランはあるのですが、数社で試算していただいたところ、平均寿命まで生きても手数料で元本割れしてしまうそうで、とてもお勧めできません。
受取開始可能時期の繰り下げは、まず公的年金から検討を
長生きリスクに備えるのは、やはり終身で受け取れる公的年金が最強です。
70歳まで繰り下げすれば、65歳時点の支給額の42%受取額が増えますし、現在法案が出されている75歳までの繰り下げが実現すれば、65歳時点の84%も受取額が増えます。65歳での給付額が15万円だとしても、70歳まで繰り下げれば21.3万円、75歳まで繰り下げたら27.6万円といった金額になります。
それなりの額の年金を終身で受け取れることは、想定以上に長生きしても大丈夫、という安心感につながり、お金の面だけでなく精神的にも大きな支えになります。ですから私は、iDeCoの受取については、積立が終了してから間を空けることなく開始し、さらに受取終了の時期も早めにして、公的年金を受け取るまでのつなぎ資金として活用するのが一番良いと思っています。
今回は、厚生労働省 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会での議論のまとめから、特に関心を集めたiDeCoの「受取開始可能時期の拡大」を中心にご紹介しました。次回以降は、現在企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っている方のiDeCoの活用にフォーカスして解説していきたいと思います。