大事なのは「自分では考えないこと」
これらのバイアスから生じる不適切な行動を回避するための最良の対策は、仕組みを活用すること。仕組みというと難しく聞こえるかもしれませんが、実はそんなに難しいことではありません。例えば、積立投資では毎月投資する日が決まっていて、自分の意思が売買に入り込む余地はありませんから、「損失回避バイアス」の影響を回避することができます。リバランスも、不確実な自分の予想に基づいた運用をしないための仕組みだと言えるでしょう。
また、自分で考えないという点ではソリューション型の投資信託や、アドバイザーのような専門家を活用するのも一案だと思います。ソリューション型の投資信託には、バランス型ファンドやターゲット・イヤー型ファンド等があり、当初の予定通り運用できるようリバランスをしたり、年齢ごとに資産配分を自動的に変えていったりします。保有資産がまだ少ない時には、このような投資信託の活用はバイアス回避の有効な手段になります。
一方で、投資信託は既製品であり、自分にとって最適なものになっているとは限りません。自分にとっての最適な運用をするには、アドバイザーを活用するとよいでしょう。最近は、IFAと呼ばれる独立系の投資アドバイザーも増えていますので、彼らの知見を活用してもいいかもしれません。
今回は投資教育の限界と行動ファイナンスの活用についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか? 金融リテラシーを身に付けるのは大変ですが、仮に身に付けたとしても、人間固有のバイアスで不適切な投資行動をしがちだという点が重要です。適切な投資をするためには、金融リテラシーの強化のみならず、行動ファイナンス的な知見を取り入れた仕組みや商品を活用することが必要になるのです。