前回(これ以上の「金融リテラシー」は日本人に不要? 本当の課題は何なのか)は金融教育の日本の現状について他国と比較しつつ、日本人に足りないのは成功体験であり、そのためには資産運用を始めやすい仕組みづくりが必要という話をしました。その金融教育における必要項目として、必ずと言ってもいいほど出てくるがの「72の法則」です。実は前回引用した金融教育の国際比較においても、質問の1つに「72の法則」が入っていました(※72ルール/126ルールという場合もある)。

「72の法則」は実際に活用できるのか

「72の法則」は資産が2倍になるために必要な運用期間とリターン(年率)を求めるための簡単な公式です。具体的には「運用期間×リターン(年率)=72」という式に基づき、例えばリターンが3%であるならば、72÷3%=24年と計算されます(リターン3%の時には24年間運用すると資産が2倍になる)。また、逆に運用期間が12年と決まっていれば、72÷12年=6%と計算できます(運用期間が12年ならば、6%のリターンで毎年運用できれば資産は2倍になる)。

このように「72の法則」を活用することで、2倍になるために必要なリターンや運用期間を簡単に計算することができるのです。何かと複雑な資産運用において、こんなに簡単に目安が分かるのは画期的だと思いませんか?

一方、この法則は便利ではあるものの、活用するシチュエーションがあるのかというと疑問もあります。というのも、最近ではつみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を通じて積立投資をしている人が増えているからです。

実際、日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査(2021年度)」を見ても、この3年くらいで20代、30代、40代で投資信託を保有している人の割合が大きく増えている一方、70代の投資信託保有率は下がっています。また現役世代(20~59歳)もリタイア世代(60歳以上)も、投資信託購入の理由の第1位が「長期にわたっての資産運用として」であり、「短期の値上がり益を期待して」を上回っています。

つまり、投資家の多くはまとまったお金を一括で投資しているのではなく、毎月コツコツと積立投資を実践しているのだと考えられます。ですから、一括投資が前提の「72の法則」を知ったとしても、正直あまり活用する機会がないのです。

そんな中、慶應義塾大学理工学部の枇々木教授が、積立投資用の「72の法則」として「126の法則」を考案・提唱されています。今回はこの「126の法則」を簡単に紹介し、その活用の仕方について議論したいと思います。