iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)が注目される理由の一つに、所得税や住民税の負担を軽減できることが挙げられる。具体的には、年末調整や確定申告を行うことで掛金の全額が所得控除の対象となり税負担が軽減される。

税控除の仕組みを理解する─なぜiDeCoで税金が安くなるのか

そもそもiDeCoの掛金が節税につながる理由は、「小規模企業共済等掛金控除」という税制上の仕組みにある。控除とは、納税額を計算する際に一定の金額を所得から差し引くことを意味する。この控除が多いほど、税金計算のもとになる「課税所得」が少なくなり、結果として納める税金が減るという構造だ。

ここで重要なのは、iDeCoの掛金は「税額」から直接差し引かれるのではなく、「所得」から差し引かれるという点である。つまり、年間10万円の掛金を払ったからといって、税金が10万円安くなるわけではない。実際の節税額は、その人の所得や適用される税率によって異なる。この点を正確に理解しておくことが、iDeCoの節税効果を適切に評価する上で欠かせない。

節税効果が反映されるタイミング─所得税と住民税の違い

iDeCoの掛金による節税効果は、所得税と住民税で反映されるタイミングや方法が異なる。この違いを理解しておくことで、節税効果を実感しやすくなる。

まず所得税については、年末調整や確定申告を行うタイミングで控除が適用される。もし税金を多く納めていた場合は、手続きの1カ月~1カ月半後に還付される。会社員の場合は給与に上乗せされる形で、自営業者の場合はあらかじめ指定した口座に入金される形で戻ってくる。

一方、住民税の節税効果は所得税よりも遅れて反映される。住民税は「所得割」と「均等割」という2つの方法を組み合わせて計算されるが、iDeCoで節税できるのは「所得割」の部分だ。税率には例外等があるものの、市町村民税6%と都道府県民税4%を合わせて10%となる。たとえば、iDeCoの掛金が月1万円(年12万円)の場合、節税できる住民税は12万円×10%で1万2000円となる計算だ。

住民税が安くなるのは、iDeCoの掛金を払った1年間(1月~12月)分の年末調整や確定申告を行った次年度の6月から。所得税に比べて反映が遅く、しかも還付金として戻ってくるのではなく、今後支払うべき金額が減る形となるため、やや実感しにくいかもしれない。

会社員や公務員の場合、基本的に住民税は給与から天引きされる。年末調整か確定申告かにかかわらず、6月から天引きされる住民税額が減少する。自営業者などの場合は、6月ごろに新しい税額が反映された納付書が自宅に届くので、それを使って自分で納付する形となる。